どうも、勘助です。
「カピバラ食堂」新装開店してから1ヶ月が経ちました。おやじさんの目論見は大当たり。なぜか壁の巨大カピバラ温泉がウケて、連日超満員です。
私も常にだれかが座っている状態で、休む間もありません。客が引け、掃除を終えたかあさんに「おつかれさま」となでてもらうと、それだけで睡魔に襲われ、日々の出来事を振り返るゆとりがありませんでした。
それでも、ひとつだけ大事件を記録しないわけにはいきません。なんと、カピバラ食堂に家族が増えたのです。いえいえ、かあさんが子供を生んだとか、養子をもらったとかいうのではありません。ばあちゃんと姉さんが来たのです。
あの新装開店の朝、ヒツジもどきがやってきてかあさんに何か耳打ちしてから、かあさんは考え込むことが増えていました。「おお、なんてこと。」「どうしたらいいのかしら。」私の大好きなかあさんが、明らかに悩んでいました。
おやじさんだって気付きます。「何か悩み事があるなら話してくれないか。」とうとうある夜、おやじさんはそう切り出しました。何度も言いあぐねて、でも意を決したようにかあさんは話しだしました。
「私、あなたに嘘をついていたことがありますの。実は、私の両親は亡くなったとお話ししましたけれど、母だけ、生きているのです。」「そうか!それは素晴らしいじゃないか。なぜ話してくれなかったんだ?」「実は…」
かあさんは、ぽつりぽつりと語り始めました。おやじさんは黙って聞いています。机の半兵衛も、お美代も、もちろん私も、かあさんの話に聞き耳を立てました。たぶん、壁のカピバラも耳をそばだてて聞いていたことでしょう。