「放火事件とはまた…」
会長が絶句する。
「もみの木学園の中学生男子2人が、学園の職員室外に火をつけたようです。その時間、職員がみな介助に出払っていたために発見が遅れ、通りがかりの人の通報で消防がかけつけたとか。思いのほか広く焼け、火の気のないところからの出火だったため、原因を調査しに警察も入りました。その男子2名は犯行を素直に申し出たそうです。それで、余計に騒ぎが大きくなって…。」

新吉は、何度も足を運んだもみの木学園を思い出していた。
職員室外と言えば…あのあたりか。
火のつくものなどあっただろうか?新聞紙でも運んだか? それでも職員が誰も気付かないとは?
職員室外に人がいなかったのはともかく、職員が全員介助に当っている時間に、子どもが2人いないことに気付かないというのは不可思議なことだった。

「なぜ放火など!」
会長が問いかける。
「はい。学園が燃えてしまえば、自分たちはもうここに捕らわれていなくて済むと思ったと答えたそうです。」 
「なんと…」

学園に住む子どもたちは、学園に住まざるを得ない事情を抱えている。
捕らわれて?
新吉には考えられなかった。

「それだけではありません。小・中・高校生がいますが、それぞれ学校で、何かとトラブルが起きているようです。」
スミレも大きなパニックを起こして、迷惑をかけたことがあった。
新吉はその時の、校長先生や真理の親身の対応を重々聞いている。 
「窃盗、対教師暴力、器物破損…。」

「星川さん。」
会長は首だけでなく身体ごと新吉に向き直った。
「もみの木学園とはそのようなところだったのですか?」
「いえ…。私はそのような話は聞いたことがありませんでした。」

調査員が遠慮がちに割って入った。
「問題を起こすのが学園の子だからといって、それぞれの学校のPTAでも問題になり、いたって真面目に通学している学園の子どもたちにも風当たりが強くなっているようです。なかにはいじめに遭っている子もいると聞き及びました。」

なんということか。
新吉は、スミレと同室だったもうひとりの女の子の顔を思い出していた。
大人しい子だったな。
あの子は大丈夫だろうか。
一体、学園はどうしてしまったというのだろうか。






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