真理が、メグちゃんが尋ねてこないことに気がついたのは、いよいよトコちゃんが3月末に帰宅すると決まった頃だった。
里子に出るといってもすぐ近所のこと、いつでも遊びに寄こしますからと柳沢夫妻は言っていた。
けれども、年末に学園を出てから、一度も顔を見ていない。
スミレたちの話では、学校へは毎日来ているというから、病気というわけではなさそうだ。

元気でいるならまぁ、心配することもないか、と気を取り直す。
それに、顔を見ていないといっても、どんな暮らしぶりかはそれなりに詳しく知っている。
というのも、スミレたちがあれこれと報告してくれるからだ。

高級そうなスカートで登校している話はもう何度も聞いている。
この雪が降り積もる長野の冬にスカートは寒いだろうとつぶやいたら、登下校はいつもパパかママが運転する車で来ているから、歩かないのだという。
なるほど、それなら寒くもなかろう。

この前の週末には、東京に行ってホテルにお泊りしてきたんだって、というような報告も聞いた。
いくら言っても泥んこ遊びをやめてくれず、洗濯物の山に溜息をついていたというのに、あのメグちゃんがホテルにお泊りね…どこかちぐはぐな印象に、ちょっと微笑まずにはいられない。
それにつけても、柳沢夫妻は、メグちゃんを大事にしているようだ。

おかしいな?と再び思ったのは、2月の末のことだった。
3人娘がひそひそと内緒話をしているので、掃除をしているふりをして、聞き耳を立てていると、どうやらメグちゃんのことを話しているようだった。
細かいことを聞きとれず、胸につかえたまま気になっていると、他の職員からおかしな話を聞いた。

どうやら、柳沢夫妻がメグちゃんを転校させようとしているらしいというのだ。
それだけではない。
学園の子どもたちと話をしないようにとでも言われたらしく、メグちゃんはスミレやトコちゃんたちを無視して、一緒に遊ばなくなったらしい。
子どもたちが好きそうなノートや消しゴムを配っては、新しい友達作りをしているらしい。
先日、メグちゃんがおうちに友達を招いてパーティーをしたらしいが、トコちゃんやスミレには一切声がかからなかったとも言う。

学園から、個人の家に遊びに行かせるようなことはしない。
それを知っているから呼ばれなかったのだろうということは分かる気がする。
しかし、どうにも気になる話だった。
転校させようとは、引っ越しでもするのだろうか。
首をひねっていると、別の職員から、新たな情報が寄せられた。
柳沢夫妻の家に借金取りが来ているらしいといううわさだった。







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