メグちゃんも、トコちゃん同様、スミレと同室の措置生だ。
トコちゃんほどではないが、スミレはメグちゃんとも仲がよかった。
トコちゃんとメグちゃんが仲良かったので、そこにスミレも入れてもらった形だ。
小学校は1年2組で隣のクラス。
学園の部屋でもベッドを並べている3人だった。
スミレが、何かの拍子にパパとおばあちゃんは死んじゃったのと話したら、メグちゃんは私はお父さんとお母さんが一緒に死んじゃったの、と答えたので、スミレは驚いてしまった。どうして?と聞いたら、交通事故だと言った。
スミレが事情を正確に知ったのはずっと後になってからのことだが、メグちゃんのご両親も施設の出身で、それぞれが天涯孤独の身だった。
それが、施設で信頼し合った同士結婚し、家庭を築いて仲良く幸せに暮らしていたようだ。
事故が起きたのはメグちゃんが5歳になってすぐだった。
家族旅行にでかけ、高速道路を帰る途中、居眠り運転のトレーラーに激突されたのだ。
メグちゃんも大怪我はしたものの、奇跡的に命はとりとめた。
しかし、ご両親は即死だった。
メグちゃんが両親の死を知ったのは、父親の会社の人々が葬儀を出してくれ、二人ともお骨になった後だった。
メグちゃんの怪我が重く、葬儀に間に合うように説明することができなかったのだ。
幸運にもメグちゃんは後遺症が残ることもなく全治した。
しかし、暮らしの場を失ってしまったので、傷が癒えると、もみの木学園に措置された。
学園は創立1周年を迎えたところで、トコちゃんが開園と同時に入所したころに比べれば、職員も利用者もずいぶん増えていた。
メグちゃんも、真理の担当だった。
全治したとはいえ、もうしばらくはリハビリも必要だった。
両親を恋しがって泣くメグちゃんを、真理はゆっくりゆっくりと育てていった。
それでも、両親の愛情を一身に受け、幸福の中で5年の月日を送ってきたメグちゃんは、根本的に明朗闊達な性格だった。
時間が薬になり、少しずつ元気を取り戻したメグちゃんは、屈託のない笑顔を見せるようになり、学園のムードメーカーとして、誰からも愛される存在になっていった。
そんなメグちゃんに、里親の話が来たのは、小学校1年の夏のことで、丁度スミレが入園し、トコちゃんの両親がトコちゃんを家に帰してくれと言い出した時期と一緒だった。
その夫婦は、すでに里親の認定資格を受けており、夏休みの過ごしの場として家庭を提供するような、短期間の養育を何度か経験していた。
一人娘が大学生になったのを機に、家庭という場に恵まれない子供たちの役に立ちたいと一念発起したとのことだと聞いて、職員たちはその美しい心にしきりに感激していた。
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