マリアンヌは水面に浮かんだメガホンをひとつつかむと、子どもたちに説明し始めた。

「こっちの大きな丸のほうを、プールにくっつけて、思い切り真っ直ぐ水中に沈めると…ほら!」
反対側の、普段なら口にあてるほうから、水柱が勢いよく飛び出した。
きゃあっと、子どもたちから悲鳴が上がる。歓声?驚き?何とも言えない声だ。

マリアンヌはもう一つメガホンを広い、両手にひとつずつ持った。
それを水面につけて、交互に水中に勢いよく沈める。
すると、右、左、右、左と水柱が上がる。

何をするのか予め打ち合わせをしていた大岡先生や江夏先生も、つい子どもたちと一緒になって子どもに戻ってしまった。
「さあ、プールに入って!ひとり2つ、メガホン持ってきて!!」

今度は全員がプールに入って行く。
マリアンヌがプールサイドに上がってきた。

やってみようか、というマリアンヌの声を待たずに、こどもたちはさっき見たばかりのことを再現しようとする。
見たものを真似するのが苦手なみほちゃんにには江夏先生がついて、一緒にメガホンを握った。左手にマヒがあってメガホンが握れないしょうたには、田端さんがついて、左手代わりになっている。

ぎゅっと水にメガホンを押しつけると、勢いよく水柱が飛び出す。
飛び出した水柱は、大きな水のつぶになって頭の上から降ってくる。
自分の手元に集中していると、となりの子が飛ばした水も襲ってくる。
いつの間にかみんな頭から水をかぶってぐしゃぐしゃの顔になりながら、それでも水柱を量産している。

「何やってるの〜!」
グランドに出てきていたらしい子どもたちの声が近づいてきた。
1年生だ。矢口先生の姿も見える。
「今日のたんぽぽの授業はプールなんだ。」
マリアンヌが答える。
その間も、子どもたちはメガホンからさかんに水柱を立てている。
「うわぁ、面白そう!」
1年生が一生懸命背伸びをしてフェンスにしがみついているのを確認してから、マリアンヌはたんぽぽの子どもたちに声をかけた。

「では、今日最後の仕上げです。音楽に合わせて水を飛ばしてみよう!」
マリアンヌがスイッチを入れる。
みんなが大好きな曲が流れ始めた。

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも

何のために生まれて 何をして生きるのか
答えられないなんて そんなのは嫌だ!
今を生きることで 熱いこころ燃える
だから君は行くんだほほえんで

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも

ああアンパンマン優しい君は
行け!皆の夢守るため


何が君の幸せ 何をして喜ぶ
解らないまま終わる そんなのは嫌だ!

忘れないで夢を こぼさないで涙
だから君は飛ぶんだどこまでも

そうだ!恐れないでみんなのために
愛と勇気だけが友達さ

ああアンパンマン優しい君は
行け!皆の夢守るため

時は早く過ぎる 光る星は消える
だから君は行くんだほほえんで

そうだ!嬉しいんだ生きる喜び
たとえどんな敵が相手でも

ああアンパンマン優しい君は
行け!皆の夢守るため


フェンスをつかんでいる子どもたちの歌声が合唱になって、水柱と一緒に青空に吸い込まれていった。







ポチッと応援お願いします