ミドリは、体の底から得体の知れないエネルギーが湧き出てくるのを、もう止めようがなかった。
今まで言いたくて言いたくて言えなかった言葉が、堰を切ったように溢れてくる。
それも、理路整然と。
ミドリは、哲也を論破したいと思った。
やりこめてやりたい。
今までされたことを思ったら、このくらいの仕返しは当たり前でしょう?

「あなたは逃げているだけよ。もう一度輝いていたころに戻るための努力が面倒だから、逃げているだけ。私やスミレのせいにして。」
「何だと!」
「卑怯なのよ。スミレができたことは、私ひとりの責任じゃない。進路が変わったのだって、私も同じよ。高校を卒業できただけ、あなたはいいじゃない。私なんか中退よ!なのにあなたは、自分一人悲劇にあったみたいに思ってる!」
「違う!」
「違わないわよ。お酒飲んで、暴力振るって、誰のおかげで食べて行けるんだって恩着せがましく言って!!」
「恩着せがましいだと?」

「あのまま大学行ってたら、輝かしい未来が待っていたのにとでも思っているんでしょう?サッカー選手として注目浴びて、Jリーグ入って、モテまくって、ヒーローになれたはずなのにとかって。」
「そんなこと、考えていない!」
むきになって否定することで、哲也は自分の考えを見抜かれたと証明してしまった。

「あのね、あなた、勘違いしている。あなたは私たちのせいで輝かしい未来が失われてしまったと思っているんでしょうけど、それは違うわ。

輝かしい未来は可能性があるだけ。
努力して、行動して、実現させた時だけ、存在するの。
何もしなで夢見ている時には、何もないのよ。
最初から何もないものは、失うこともできない。
失えるのは、既に持っているものだけよ。

手に入れてもいないものを、失ったと考えるなんてどうかしている。
あなたは今から、今持っている「家族」を失おうとしているのよ。
その代わり、どうぞほしいものを手に入れてください。
それで、気が済むでしょう!」

バシンと頬が鳴った。






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