「ねえ、ヒデ君。今日もサッカーするよ。この前ちゃんとボールをキックできたから、今日もできるよね。やってみようね。」
スミレ先生が誘いに来てくれた。
みんなはもう、自分のボールを持って行って練習の準備をしている。
ぼくは校庭のすみっこでしゃがみこんでいた。
この前、こうやって座っていたら、スミレ先生が後ろから抱っこしてくれた。
グイグイ引っ張られたり押されたりしてちょっと痛かったけど、
最後は後ろから抱っこしてくれて、一緒にボールを蹴ろうって言ってくれた。
スミレ先生、とってもいい香りがした。
ふんわり柔らかくて、温かかった。
ママはもうボクを抱っこしてくれたりしない。
もう大きいから、抱っこしちゃいけないって、偉いお医者さんの本に書いてあったんだって。
ジリツシンヲヤシナウって何?
スミレ先生はもう引っ張ったりしないって言ってたけど、こうやって座っていたら、きっとまたボクのことを呼びに来てくれる。それで、サッカーしようって、抱っこしてくれるに決まっている。
だから、ボクは絶対に動かない。
スミレ先生は悲しそうな困ったような顔をして、みんなのほうへ行ってしまった。
ボクを置いていかないで!
ボクは待っている。
でも、スミレ先生は来てくれない。
大きな声で泣いてやる!
それでも、スミレ先生は来てくれない。
どうして?
そうだ。サッカーのせいだ。
ボクがサッカーができないから、スミレ先生はボクのことが嫌いになっちゃったんだ。
だって、むこうでシュートの練習をしているみんなとは、あんなに楽しそうにしている。
そうか。スミレ先生もママと同じなんだ。
サッカーができる子が好きなんだ。
ボクは、誰からも、好きになって、もらえない。
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コメント
コメント一覧 (4)
子供の気持ちはわからないですね・・・
私、保育園の先生していた事あるのです。
子供の気持ち・・良くわからなかったです。
おお、保育士さんをなさっていたことがあるのですね。
子どもの気持ちがよくわからなかったとしたら、
あまり楽しい仕事ではなかったかもしれませんね。
私は保育士経験はありませんが、
そーゆーことか!とわかってみると、意外とストレートだったりしますね。
男の子には多いですね。
高校生になっても変わりません。
親や兄弟とのかかわりが希薄になり、淋しい子どもが増えたんでしょうね。
心のゆとりがあるときは、期待に応えてあげます。
いつか、かまって君を卒業できるのかしら。
変わるかまって君と、ずっとそのままのかまって君がいますよね。
病的なかまって君に付き合うのは疲れます。
やはり、対処するより、生みださない努力が生産的な気がするんだけどなぁ。
ま、語弊はありますが、男は基本、かまって君だと思っています。