ママが泣いている。
さっきまでは怒っていたんだ。

ママはスミレ先生に呼ばれて、学校に来た。
スミレ先生とお話ししたママは、とても怖い顔で帰ってきた。
「どうして、あなたは、いつもいつもそうなの!?」

ママは怒るととっても怖い。
だからボクはママがいつも笑っていたらいいのにと思う。

「先生がやってごらん、って言うこと、どうしてあなたはやろうとしないの?」
ママの質問は難しい。
なんて答えたらいいか、わからない。

「イチゴの絵を描こう!のときも、虹のダンスのときも、サッカーも、スミレ先生はヒデ君にもできるように考えて、やってみようって言ってくれるのに、どうしていつもイヤだ!できない!って泣くの?」
だって、本当に難しそうなんだもの。
でも、言えない。

「スミレ先生はとっても困っていたわ。ママ、恥ずかしかった。どうしてあなたは、いつもそうなの?子供らしく素直に、やってみたらいいじゃないの。」
ああ、こまった。
スミレ先生も困っているのか。
でも、ボクだってずっと困っている。
だって、うまくできなかったら、ママはきっと言うんだ。
「どうしてそんなこともできないの?」って。
「もうちょっと、がんばればいいのに」って。
ボク、がんばってもできないかもしれないよ。
できなかったら、ママはボクのこと、嫌いになっちゃうんでしょう?
ママは、何でもできる子が好きなんだよね。

何かして、うまくいかなくて、かっこわるくて、ママに嫌われちゃうくらいなら、最初からしないほうがいいじゃないか。何もしなければ、失敗だってしないもんね。

ずっと怒っていたママは、ボクが返事をしないので、シクシク泣きだした。
ごめんね、ママ。
ママはボクが嫌いなんだね。
ボクがママを悲しませてばかりいるからだね。

でも、大丈夫だよ、ママ。
ボクは大人になったら、ウルトラセブンになるからね。
強くなって、宇宙の平和を守るんだ。
誰にも負けない。強いんだぞ。
そうしたらママもボクのこと、大好きになってくれるよね。

だから、待っていてね、ママ。






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