ボク、ヒデ君。
変身が大好き。
いろんな仮面ライダーの変身を覚えたぞ。
ウルトラマンだってできる。
一番のお気に入りはウルトラセブンだ。
ホントはティガがいいんだけど、セブンの変身はパパが教えてくれたんだ。

毎日毎日ライダーとウルトラマンを見る。
怪獣の名前もいっぱい覚えた。
必殺技もできるんだ。

スペシウム光線、エメリウム光線、アイ・ビーム!!
パンチもキックも練習した。
特に、キックは大事だ。
この前、キックの練習をしていたら、間違えてベッドを蹴っちゃった。痛かった〜


ヒデ君はお絵描きも好きなんだ。
描くのはいつもウルトラマン。
色も塗れるよ。ここは、赤。ここは、青。ここだけちょっと紫。

ヒデ君はお手紙も書くよ。
ひらがなをたくさん練習したからね。
時々、どっちのひらがなが前かわからなくなっちゃうけど、平気平気。
今日もスミレ先生に「だいすき!」ってお手紙書いてきたよ。
スミレ先生、なんて言うかな。

なんで?
今日はサッカーするんだって。
ヒデ君、サッカー知ってるよ。
わーるどかっぷでしょ?
ママもパパもサッカーが大好きだから、ヒデ君もテレビで応援する。
ニッポン!ニッポン!!でしょ?

え?ボールを蹴飛ばすの?
それは大変だ!
ムリムリ。ヒデ君にはできないよ。
だって、難しそうだもん。

いやだな、いやだな。サッカーいやだな。
ヒデ君にはできないよ。
すごくやりたくないよ。
だって、ボールを蹴れないかもしれないじゃない。

え?
スミレ先生、いいよいいよ。ヒデ君は見てるから。
大丈夫だよ。大人しくしてる。いなくならないよ。
ヒデ君はウルトラマンキックができるから、サッカーはできなくてもいいでしょ?

いいよ、スミレ先生。
そんなに言わないで。
こわいよ。できないよ。ヒデ君、運動は苦手だよ。
泣いちゃうよ。ほら、いやだよ。泣いちゃうよ。

スミレ先生!
引っ張らないでよ。ボク、絶対動かない。
押さないでってば!
なんでサッカーしなきゃならないんだよ!

やめて、やめて、やめて!
できないよ!
ウルトラマンキックができたらボールも蹴れるなんてうそだ!
ボクにはできないよ!

スミレ先生、そんなに無理やりやらせるのはタイバツだよ!
いけないんだよ!
絶対できるなんて、どうしてわかるの?
スミレ先生なんて大嫌いだ!!

後ろから抱っこするから、一緒に蹴ってみよう?
絶対に立たないぞ。
思い切り寄りかかってやる!
だって、できないに決まってるもん。

スミレ先生、そんなに力持ちだって知らなかったよ。
痛いよぉ。
なんでそんなにやらせたいんだよぉ。
あ!

ボールに足が当たったら、ボールがコロコロしたよ。
みんなが拍手してくれてる。
ヒデ君、サッカーできたのかな?

スミレ先生がギュッって抱っこしてくれた。

「ヒデ君やったね!サッカーできたね。ヒデ君はウルトラマンキックだけじゃなくて、サッカーもできるんだよ。でも、『できないよー』って言ってやらなかったら、自分がサッカーできるって気付かないでしょ?だから先生は、どうしてもヒデ君にボールをポンって蹴ってほしかったんだ。引っ張ったり押したりしてごめんね。痛かったね。1回だけでいい、どうしてもやってみてほしかったんだ。でも、こんなふうに引っ張ったり押したりしてでもやってみてもらうのは今日だけだからね。次からは自分の力でやってごらん。またできないよ!って泣いていても、今度は先生、見ているだけにするからね。」

スミレ先生、それってどういう意味?






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