平日にブログを更新した時は、出勤のバスの中でケータイから読み直すことが多い。
作成した時に慎重に誤字脱字をチェックしたつもりでも見落としていて、この読み直しで発見することが多い。句読点が多すぎるのも悪い癖だ。帰宅してから、こっそり修正する。
 
その朝、更新したての記事をケータイで読み直し始めた。
バスがなかなか来なかったので、乗る前にちょっと読み始めようかと思ったのだ。
なかなかリズムのある文章が書けたな。
と思ったのは最初のうちだけで、そのうち夢中になってしまった。
 
「プシュ〜」
ハッとして顔を上げると、私が乗るはずのバスが扉を閉じたところだった。
「ああっ!」
本気で叫び、追いかけたが、バスは走りだして止まってくれなかった。
たまたますぐ後から、別会社のバスで、利用できるものが来てくれたので大事には至らなかった。
他の時間帯にはこの他社のバスはないので、遅刻の危機になっていただろう。
それに、毎朝顔を合わせる同乗者たちの視線は何とも恥ずかしかった。 
 

4月からいろいろな考え方が変わったり、生活習慣を変えたりしている影響か、その場その場の集中力が増した気がする。
これまで、自分の特徴を一言でいうなら「マルチタスク」だろう。
同時に複数のことを考え、実行していく。そうできるように予め考えていく。
それができることが、小さな自慢でもあり、そうできる自分がちょっと好きだったりしたものだ。
 
反面、一つのことに対する集中力というのは、深いのかもしれないが持続しない。
ごく短い単位で集中しては他のことに目を配り、配分を再確認している。
目と耳が別のことをとらえていることも多い。
つまり、集中しきってはいないのだ。
 
ところが、バスが来て、音を立てて止まり、扉が開き、周囲の人が動いても気づかないほど、本の中に没頭できるようになった。
これは、私史上、特筆したい事件だ。
出勤・退勤時の電車は図書館だ。危うく降りる駅を通り越しそうになったことが何度もある。


帰りの電車で読んでいた『のぼうの城』がクライマックス直前で家に着いてしまった。着替えもそこそこに、晩ご飯を作るくまさんを尻目に、続きを読み始めた。目の前でテレビが何か言っていたが、一切気にならず、私は戦場に没頭する。

丁度読み終えた時だった。
「………ですよ。聞いてましたね?じゃ、借りますよ。」
「はい。」
思わず返事をしてしまったが…
くまさん、私はいつ何をあなたに貸す約束をしたんでしょうね?






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