王羲之くんと仲良くなった翌3月3日。
くまさんは私が目覚める前からスッキリ起きて、沼津へトレランに出かけた。
私もスッキリ目覚めて、朝食をとりながら考えた。
そうだ、映画に行こう。

予告を観て気になっていた映画について、ブロ友さんが記事を書いていて、「ネタバレあり」とのことなので、読むのをやめたのだ。そうそう、あれにしよう。

ライフ・オブ・パイ『ライフ・オブ・パイ』
トラと漂流した227日とある。動物好きな私は期待する。227日もあったら、トラといえども人間と仲良しになるのではないか。

そもそも、動物園のトラらしい。
だったらなおさら、心の交流が生じそうな気がする。

この冬、秋田に帰省した時に、「八幡平クマ牧場」脇を通ってきた。経営者の妻は母の友人でもある。雪の壁を伝って外に出たクマたちは、給餌係だった女性を襲って死に至らしめた。逃げたクマたちは射殺されたが、檻に残っていたクマたちは他のクマ牧場や動物園にもらわれていったそうだ。

ここは動物同士。なんとか仲良くなれないものか。
全ての期待をこの映画にかけて、でかけてみようという気になった。

朝9:30。大きなスクリーンで観られるというので、なおさらウキウキと出かけた。
3Dだという。
私の特殊な目は、普段から3D度が低い。
夕刊にたまに出ている「マジカルアイ」も、どうやっても見えない。
外でするバドミントンやテニス、キャッチボールもできない。
私が「ここにある」と思う位置にボールやシャトルは存在しない。
多分、人々は私以上に立体の世界に住んでいる。私の眼には、必要以上に人々の顔が「平たい顔族」なのだ。
ゆえに、なんだかダメな気がして、3D映画を観たことはなかったのだ。

「3Dメガネはお持ちですか?」
いいえと答えると、100円ですとお姉さんは笑顔でおっしゃる。あの、メガネかけないと映画が見えないです。眼鏡の上から3D眼鏡かけて大丈夫ですか?
「はい、二重にかけてお楽しみください!」

アホなことを。
こんな私でも、カバーグラスがあることくらい、調べてあるのだ。
「あの〜、二重に眼鏡をかけたら耳が痛そうだから、こっちのカバーグラスください。」と、表示の写真を指さした。
「えっ!カバーグラスって…」
何ですか?と私に尋ねそうになって、言葉を飲んだあなたは偉かった。

彼女は静かに先輩を呼んできた。
我が手元に、300円のカバーグラスがやってきた。
これで、3D映画が2Dにしか見えなかったら悲しい。そもそも、3D映画を素で観ると、ボヤボヤした画面になっているはずだ。

映画上映が始まる。
さまざまな予告編から、カバーグラスをかけて見ていた。
2Dは普通に2Dに見える。
なんだ。

『オズ はじまりの戦い』の予告に不意打ちを食らった。
字幕が宙に浮いているではないか!
ブブン。
怖い顔をした妖精がぶつかって来そうな勢いでやってきた。
ぎゃ〜。
思わず、思い切り避けてしまった。

これか!これが3Dか!
いけるぞ。私の目でも、飛び出す映画は楽しめるのだ!!!!!!


前置きが長くなった。
映画のストーリーは他のブログや紹介に譲ることにしよう。

息詰まる展開は、きっと誰の心も掴むだろう。私もいつしか夢中になってしまった。水しぶきを浴びたり、飛び上るシロナガスクジラにみとれたり。天幕つきのボートにはトラの「リチャード・パーカー」がいる。だからといって、食料をすのこの上に並べてたら、ちょっとした荒波に全部流されるぞ!と警戒していたら、案の定、あっという間に流されてしまった。ほらほら、言わんこっちゃない。夢中を通り越して、おせっかいおばちゃん気分だ。

問題のトラだ。
難破した客船から逃げ伸びたシマウマとオランウータンを、ハイエナが襲うシーンは辛かった。シマウマは平和だ。オランウータンは友達だ。それを、ハイエナはエサとしか見てくれない。

トラと友達になれないか?と考えている私なのに、ハイエナと友達になろうとはカケラも思わない。お前なんぞ海に落ちてしまえ〜と、涙を浮かべて呪ってしまった。勝手なものだ。

そのハイエナを成敗してくれたリチャード・パーカーとは、なんとか友好条約を締結できそうな気がした。172分の映画のほとんどを、その期待と共に過ごした。

が、期待はいつでも、したほうが負けるのだ。
漂流がメキシコ湾に漂着したことで終わった時、リチャード・パーカーは、パイをふり向きもせずに森の中へ消えて行く。お魚も獲ってもらったのに。ミーアキャットも集めてもらったのに。雨水も集めてくれたのに。半死半生のパイのため、村人を呼びに行ったのかと思った私がバカだった。村人は勝手にやってきた。

私と同じ期待を抱いていたパイは、トラがただ単に去って行ったのを見て号泣する。パイにとってリチャード・パーカーは227日間の生き甲斐だったのだ。でも、リチャードにとってパイは…なんだったのだろう。


映画を見終わった時には、心身ともに疲労困パイしていた。
味わったことのない視覚情報。ドキドキハラハラの心。どうしようもないがっかり。

丁度12:00だった。家から映画館までは歩いて5分ほどだが、寄り道してご飯を食べて帰らないと、もう何もできないような気がした。

こんなパイ日和。お昼はもちろん…

フンギ

ピザでした。







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