どうも、勘助です。
翌日はばあちゃんがやってきました。
このばあちゃん、かあさんが言っていたとおり、本当に只者ではありませんでした。
店に入ってきた時、ばあちゃんはスヌーピーのTシャツに木綿のハーフパンツ、クロックスといういでたちでした。「ボンジュール、花亜。あなた老けたわね。こちらが旦那様?まぁ、熊さんみたいね。」
新装開店の日に、大きな花束を抱えてやってきた後藤というヒツジもどきが後から入ってきました。「花亜様、大奥様をご案内いたしました。」「ごくろうさまでした、後藤。」かあさんが答えます。なんだか、なんだか…
「長くごあいさつできずに申し訳ありません。夫の久弥です。」おお。親父さんがそんな名前とは知りませんでした。ばあちゃんは「久弥。私の息子。めんどうをかけます。」と、少しの遠慮もない声です。
どうぞおかけくださいとおやじさんに言われて、ばあちゃんは私に腰掛けました。なんで私なんだ!ん?あれ?おや?
これは、もしかして…もしかして………
かあさんがようやく声を出しました。「お母様。なぜ那須のお兄様のところや花音の本宅ではなく、こちらをお選びになりましたの?私のこと、お嫌いなのでしょう?私、子どものころより一層扱いにくくなりましてよ。」
かあさんの声は、少しも怒っていません。緊張も、失望もありません。不思議な声です。「ああ、それはね。」ばあちゃんがまた、不思議な声で答えます。
「私、癌であとわずかな命らしいの。だったら一番スリリングなところで暮らそうと思って。」

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コメント
コメント一覧 (5)
だったら、スリリングなところで暮らそうという発想が面白いです。
私だったら、どうやってその日を迎えるかな…。
今まで行かれなかったところを旅行したいです。
余命宣告は人を変えるんですね。
さてさて私は余命宣告されたら何をするかしら?
砂希さんは旅行?
うーん、私は見られちゃまずいあれやこれやを処分してからもう一度会いたい人に会いに行くかな?
まず山を乗り越えなければなりませんね
私を含めて多くのかたがたが、この山を
越えられないような気がするのです
診察には行かないので、宣告は受けずに済みそうですが
「余名宣告」というちょっとした入力ミスに
想像の翼が広がってしまいました。