どうも、勘助です。
泣きやまない弓子さんに、かあさんは言いました。
「泣きたい時には泣けるだけ泣いていいのよ。」

弓子さんはハッと顔を起こしました。
「そんなこと言うの、融だけかと思っていました。」
どうやら弓子さんは、本当に辛い境遇であったようです。

かあさんが、優しい声で言いました。「私は不器用で世間知らずで、本当に何もできないのです。でも、夫はそんな私をあるがままに受け入れてくれました。私は私でいいのだと思わせてくれたのは夫のおかげです。」おやじさんが照れています。

「夫に出会うまで、私は自分の運命を呪っていました。神様に意地悪をされたと感じていましたし、前世で何か罰が当たるようなことをしたのだろうとも思っていました。自分の運命に対して、私はとても無力でした。

けれど、夫に出会って気付いたのです。世界は広く、人は多く、自分が選びさえすれば、私は認められ、愛され、誰を責めることもなく平和な気持ちで生きていくことができると。」

「あの、お願いがあります!」弓子さんが突然大きな声を出しました。
「私をこちらで働かせてください。仕事はもう辞めました。料理は得意です。掃除もします。根気強いほうだとも思います。勘もいいです。お願いします!」

「いいですよ。」おやじさんはニッコリと微笑んで、答えました。「ちょうど人手がほしかったところです。明日からでも来て下さるとありがたい。」
「もうひとつ、お願いが。融が私を呼んだように、私を姉さんとよんでください。」 







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