どうも、勘助です。
彼女の名前は弓子さんといいました。弓子さんの話を聞いているうちに、不肖勘助、涙が止まりません。隣で兼続もすすり泣いています。半兵衛は号泣です。

先月、弓子さんはここで男に別れを告げられたのですが、その様子を、年の離れた弟の融さんが偶然見ていたのです。融さんはたいへんなお姉さん子で、その日も自分で注文したカピバラオムレツを一緒に食べて帰りました。

いつものようにマンションに送ってもらい、融さんはご両親と暮らしている実家へ帰ったそうです。が、翌朝早く、普段連絡などしてくることがないお母さんから電話があり、融さんが大変だと聞かされました。

弓子さんは病院にかけつけました。融さんの帰り路には長い階段があるそうです。普段まったくお酒を飲まない融さんが、なぜかその時は飲んだようで、階段を踏み外してしまったのです。一度は途中で止まったのに、また落ちたのでしょう。

融さんは頭を強く打っていました。弓子さんがかけつけると、かすかに意識が戻りました。「姉さん、被害者…いけないよ。」そんなふうに言ったような気がしました。何?と問いかけましたが返事はなく、そのまま息を引き取ってしまいました。

突然の出来事に動揺したご両親は、その晩一緒にでかけたはずの弓子さんを責めました。お前が一緒にいながら何をしていた、お前のせいで融が死んだのではないかとまで言われたそうです。なんということでしょうか。

私がいけないのですと、弓子さんは言いました。私を心配して心を乱して、ふとお酒に手を伸ばしたのでしょう。近くに缶チューハイの空き缶が2本入ったコンビニの袋が落ちていたそうです。私が弟を…弓子さんはまた泣き出しました。