どうも、勘助です。
かあさんは、自分が着るものにお金をかけません。Tシャツもズボンもエプロンも、何枚もあるわけではないのです。おやじさんも同じです。

でも、かあさんは丁寧に洗濯して、大事に干して、アイロンをかけるようです。いつでもパリッとしています。グリズリーのようなおやじさんがいつもこざっぱりと清潔に、見苦しくないのは、すべてかあさんの努力です。

センスの良いかあさんが、カピバラエプロンに言葉を失うほど感激しているのはおかしなことと、私は怪訝に思いました。かあさんは私の右の耳をぎゅっと握ってから立ちあがると、先程カウンターに置いた袋を取りに行きました。

「私も、あなたに贈り物があるの。オープン記念に。いつもありがとう。これからもよろしくお願いします。」おやじさんは照れくさそうに手を出しました。そのままお美代に腰かけると、慎重に包みをほどきます。

「ああっ!これは…」おやじさんも絶句しています。おやじさんが手にしているのは、藍色のエプロンでした。裾に大きなカピバラがプリントされています。「これ、かあさん、どこで…」

なんとまぁ、ふたりは別々に、色違いでおそろいのエプロンを、相手の分だけ用意したのです。少しだけ贅沢をして、少しだけ明るい気持ちで相手がこの日を迎えられるように。本当に、仲の良い夫婦なのです。

真新しエプロンをして立つふたりに、私は涙がこぼれそうでした。涙もろい半兵衛はもう泣いています。「さあ、あなた。美味しいお料理をお願いします。」「まかせとけ!」カピバラ食堂、開店まであと数時間です。







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