どうも、勘助です。
開店の朝になりました。おやじさんもかあさんも、あまり眠っていません。おやじさんは、朝早く市場にでかけました。いつものことです。
かあさんは半兵衛や私たちのことを丁寧に丁寧に拭いてくれます。床もすでにピカピカなのに、また磨いています。それから、市場から帰ってきたらおやじさんにプレゼントする包みを、そっと撫でてからカウンターに置きました。
ガラガラ。引き戸が控えめに開きました。かあさんの声がします。
「あら、後藤。しばらくね。お元気でした?」
「お嬢様。新装開店と聞きまして、お祝いのお花を届けに参りました。」
「まあ、よくご存じね。」
「執事たるもの、お嬢様のことなら細大漏らさず何でも…」
「おやめなさい。それは去年流行ったドラマのセリフでしょう?お兄様ね?」
黒い服の初老の男性が入ってきました。かあさんが、いつもとは違った人になっています。この男性は、いつも決まって、おやじさんが留守の時にやってきます。そうしてかあさんを「お嬢様」と呼ぶのです。
「旦那さまと奥さまもお越しになりたいとのことでしたが、来月から那須のご別邸にお引越しになることに決まり、お忙しいのです。麹町のご本宅は花音さまご夫妻がお守りになります。旦那様は花亜様にもお屋敷をとおっしゃっていますのに。」
「まあ、そうでしたか。ありがとう。那須の家ならお兄様がたもお心のびやかに暮せますね。でも、お兄様のお気持ちはありがたいけれど、わたくしにお屋敷は似合わないわ。このお花だけで十分よ。後藤はどうするの?」
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コメント
コメント一覧 (4)
しかし、なぜおやじさんがいないときなんでしょう。
実は1人2役だったりして(笑)
花音さまはご姉妹のようですね。
「かね」さまとお読みするのでしょうか…。
このネーミングは一体??
さっきまで第九の練習に出かけていた私は「かのん」様と読んでしまいます
実際に執事が追い掛けてくると、うっとおしかったりするんですよね
好きで選んだ生活なのに・・・
想像の翼が広がっていますね!
こういうコメントをいただくと、ほんとヤル気湧いちゃいます。
「花亜」の読み方、次回出てきます。
なぜこういう名前かは、30回くらい先に出てくるかも。
三の丸尚蔵館は宝箱ですね。硯箱は本当に見事でした。
御在来…を基準に、上杉家伝来のものが意気込みを感じました。特にあの裏側!
私もご主人様同様、鳳凰の虜です。鵞鳥の卵の蒔絵もすごかった…
第九の練習ですか。それが先日来おっしゃっている舞台なのですね。
追いかけてくる人がいる幸せを知っている人になりたいです。