その感情を、僕は「被害者意識」と呼んでいます。

親があんなだったから。いじめっ子がいたから。彼氏がわかってくれないから。自分はかわいくないから。美人じゃないから。世間が冷たいから。また何か起きることを恐れて、でも何が起きても対抗するだけの力はないと諦めた心理状態を「被害者意識」と呼ぶのです。

確かに、事実、被害者だったこともあるでしょう。けれども、姉さんは厳しい逆風の中を、確かに生き抜いてきたのです。笑顔で優しく、困った人に手を差し伸べてきたのです。それは、自分がいかに役立つか、証明するための行動だったのかもしれません。私はいい人とアピールして、これ以上傷つけられるのを防ぐための作戦だったのかもしれません。

でも、その証明や作戦のさなかに、ほんのりと心温まるひと時がかけらもなかったでしょうか。夢中になっている自分に気付いて、のびやかな気持ちになったことはなかったでしょうか。姉さんの決断で、事態が好転したことはなかったでしょうか。本当に、姉さんは無力な被害者だったのでしょうか。

被害者意識を抱えていると、自分の無力感と恐れのために、人とうまく向き合えなくなってしまうものです。自分の意思を対等に伝えられないのに、自分にとって望ましい結果を期待します。期待が叶わないと、要求します。だって、私はこんなに頑張っているのだもの。「…してくれて当然でしょう」「○○なものよね。」相手は威圧感を感じます。要求に従ってもらっても、やってもらって当然という態度をとります。

実際、被害者はいつも復讐や賠償を求めているのです。誰が賠償に「ありがとう」なんて気持ちを持つでしょう。誰も持ちやしません。払ってもらって当然なもの、それが賠償です。でも、相手はだんだん期待が重くて、要求が苦しくて、従うのが嫌になります。その気持ちを伝えられると、被害者は「あなたはひどい」と責め始めるのです。

そして、最大の復讐は、相手に嫌がらせをすることではありません。自分自身が傷ついて見せて、暗に「こうなった原因はすべてあなたにあるのよ。」と匂わせるやり方で果たされます。そのためには、病気でも貧乏でも社会的制裁でも、なんでも引き寄せるのが被害者意識なのです。 







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