「お客様を見てください。」
こう指示されたということは、お客様のお世話をしてくださいという意味になる。ところがナナは、ほんとうに、ただ、見ている。
「すぐに、皆様をお部屋へご案内してください。」
こう指示されたら、たいていの同業者はこの場にいてはまずいと判断する。
ところがナナは、なぜ今部屋へご案内なのかわからず、ずっとそこにいる。
「そんな言い方された相手の気持ちになってごらん。たとえばあなたが言われたらどうです?私、いつもあなたを叱ってばかりですけど、どんな気分?」
「正直、ものすごく気分悪いです!」
ああ、そうでしょうとも。
「でしょう?でもね、あなたの気分はどうでもいいんです。なぜなら、私たちはお給料をいただいて仕事をしているんです。お客様を傷つけてはダメなの!」
厳しい注意をしながら、がっくりくる。
あなたが「正直ものすごく気分悪く」なるような注意を、している側の気持ちも最悪だということが、ナナにはわからない。
トラブルメーカー。もう職場では誰もナナとは組みたがらない。管理職も途方に暮れた。クビにするにも段取りがいる。誰にやらせるか。そのとき彼らは丁度いいすき間家具があることに気付いたわけだ。
ナナがそんなふうなのは、性格が悪いからではない。誰よりも真面目で、一生懸命だ。こうも結果が伴わないと、ナナも辛いだろう。しかし、失敗感や困り感、苦手感がない。ナナの脳機能が、そういうふうにできているからだ。

コメント
コメント一覧 (4)
今の子とかたづけてしまっていいのかどうか・・
言葉が、言葉として、伝わらない子っているのよね・・
親の教育なのかしら??
いちいち、人の心を解説してあげないとわからないようで…。
発達障害という言葉もありますが、単に経験が乏しいだけじゃないかという気がします。
私も、人のこと言えないかも。
マイペースすぎるところがあるので、ナナを反面教師にします(笑)
総合判断力が必要ですね
持ち合わせていないかたはいくら優秀でも
職人になるほうが適しています
そんな女性を扱う担当者を押し付けるかたがたの
気持ちがわからない訳でもないですが、
あまりに器用すぎるからでしょう
砂希さん
FREUDEさん
コメントありがとうございます。
お3人のお言葉が
そのまま世間の順番・割合・縮図ですね。
やはりと、思いました。
少し続きがあります。
また読んでくださったら嬉しいです。