お師匠様、つつがなくお過ごしでしょうか。しばらくお目にかかれず、大変申し訳なくも恋しくも思っております。今日はご報告したいことがあって筆をとりました。わたくしの身に起きた、信じられない出来事です。

実は先週、例の舞台の降板が決まりました。お師匠様のご推挙あっての舞台でしたので、わたくしも身を入れて誠心誠意お稽古を積んで参りました。ところが、舞台監督のお気に召さなかったのです。

なんとか監督のお眼鏡にかなうようにと、お気に召さない理由を伺いました。すると、わたくしが目立ち過ぎるとおっしゃるのです。群舞のひとりなのだから、群として見えなければならないのに、わたくし一人、別に見えると。

所作が見苦しいということならば精進致しますが、わたくしの在りようを問われているよう。苦心いたしましたが変えることができず、とうとう降板となったのです。お師匠様のお顔に泥を塗ることとなってしまいました。申し訳ありません。

子供のころからお師匠様にお教えを請い、甕の水を移すように芸をお伝えいただきましたわたくしです。ひとり目立つからと言われ、降板と相成り、悲しくも思いましたが、一方でどこか誇らしく、それでこそとも思われました。

ところがです。あの日たまたまお稽古場へお運びだった外国の方から、映画に出てみないかと言われたのです。何かの冗談かと思いましたら、ハリウッドのあの有名監督さんが花魁役の新人を探しているのだそうです。

今日、ハリウッド行きのファーストクラスチケットが届きました。お師匠様から受け継いだ芸の神髄を世界に披露するチャンスです。騙されてもいい。挑戦して参ります。どうかどうか今まで同様、わたくしの心の支えでいてくださいませ。




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完全に事実無根のフィクションです。
が、師弟というのは、ある意味親子以上に深い絆で結ばれていることがあるものです。