先生。
まさか私が、何千人もいるあなたの教え子を代表して、あなたを見送る言葉を読み上げることになるとは思ってもおりませんでした。
事故の一報を受けた時、私は衝撃のあまり、頭が真っ白になりました。同窓会でお目にかかったのはつい先日のことです。退職して、本を読む時間が増えて楽しいよとお話しになった笑顔が、つい昨日のことのようです。
遊びながら道路に飛び出してしまった見ず知らずの小学生をかばって命を落とされたと知り、私は少し納得してしまったのです。先生は、そういう方です。車が接近するのを見て、無意識のうちに体が動いたのでしょう。
先生に教わったことは数知れずありますが、中でも一番印象に残っているのは「思ったことは何でもやってごらん。正しくなくても最善でなくてもいいから」です。私はあの言葉をモットーに、今日この時までを生きてきました。
おかげで、やりたいことをあれこれとやってみては、失敗してきました。うまくいったことより失敗のほうがずっと多い。でも、あの失敗があったから、今の自分があるのだと思います。何一つ無駄なことはありませんでした。
私が先生と同じ仕事を選んだのは偶然ではありません。先生にはお伝えしなかったけど、先生に憧れて、先生みたいになりたくてこの仕事を選びました。まだまだ足元にも及びません。今だから教わりたいこともたくさんあったのに。
生徒は先生を選べないと言うけれど、あれは嘘です。私は先生を選びました。私が行くまで天国で、少しだけ待っていてください。そうして私たちの毎日を見守ってください。ありがとうございました。またお会いしましょう。
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今日もフィクション、モデルもいません。
コメント
コメント一覧 (2)
私は自分がフィクションを書くとき、
シーンを思い浮かべ、登場人物になってみたりします
Hikariさんの作品のように、流れが淀むことなく読めるものは
自身が役者にでもなったように、拝読させていただきます
フィクションなのですよね…
目頭が熱くなりました
尊敬する先生、たくさんいました
軽蔑する先生もいました
この作品が、フィクションでありますように…
ありがとうございます
中学生以上なら、どなたでも、ほぼ淀みなく流れるように読めること。
私が書く文章の99%は、そのようなコンセプトで書かれています。
私が師と仰ぐ方々には、年上も年下もいらっしゃいますが、
皆様ご健在です。
そして、皆様それぞれに高弟がいらっしゃいますので、私がこのような文章をノンフィクションで読み上げることはないと思います。
それどころか、お師匠様方は、私の方が先に死んでしまいそうだといつも心配してくださいます
そういうことになったら、どなたに弔辞をお願いしようかしら?