先生。ご無沙汰をお許しください。散々世話をかけておきながら、学校をやめた後は音沙汰一つないなんて、なんて甲斐のないヤツだろうとお思いでしょうね。あれから、6年もたってしまいました。

今日はご報告があって手紙を書いています。
今度の3月1日、私は高校を卒業することになりました。
高校!?と驚かれていますよね。そう、高校です。

先生に悪態をついて退学した後、私はあの頃必死でしていたアルバイトを辞めました。先生がおっしゃる通りでした。店長は、別に私を信頼していたのでもなんでもなく、安くて便利に使えるから優しくして見せていたのです。

学校を辞めたなら何でもできるだろうと、休みもなくシフトを入れられました。最後は系列の店で売春まがいのことまでさせられそうになりました。いくらグレていても、好きでもない男となんてできないので、必死で逃げました。

とてもショックでした。悲しく、悔しく、何日も部屋に閉じこもって泣いて過ごしました。私には居場所がなかった。母は世間体を気にして泣き、父は母の育て方が悪かったからだと母を殴りました。私は家を飛び出し、友達の家を泊まり歩きました。そして、配達の仕事を始めました。

そうしたら、配達先の住所も名前も、漢字が読めないのです。地図も分からず、役立たずと罵られました。先生が「漢字は一生の財産」とあれほどおっしゃった意味をようやく理解しました。心の底から勉強したいと思いました。

それで、定時制の高校に入り直したのです。仕事と勉強の両立は大変だったけど、私、頑張りました。だから、先生にお願いがあります。
どうか、私の卒業式に来てください。先生と卒業証書を持って記念撮影させてください。そうしたら、私、先生の卒業生になれるでしょう?




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新生Win-Winは、手紙の形をとった、様々な人々の折々を綴っていこうと思います。第一弾は、あなたにも一人はいるでしょう、先生へ宛てた手紙です。すべてフィクション、モデルもおりません。
いまや義務教育以降は、いつでも行ける生涯学習の場になりました。自分で学びたいと思った時が最善の時、ですね。