朝の改札前で、念入りに防寒対策をした女の子と、初老の紳士が二組、熱心に話をしている。

ただならぬ空気が漂っているのは、ひと組は握手をした姿勢のまま、もうひと組はお互いの瞳を覗き合うようにして話しているから。

横を通り過ぎる刹那に、紳士の声が耳に入る。

「いいかい。実力は十分だ。あとはそれを発揮すればいいだけだから…」

そうか。高校受験に向かう中学生と、塾の先生だ。



自分もかつてあんなふうに、生徒を励まして送り出した日々があったことを思い出す。

「あなたが受からないで誰が受かるの?もしあなたを合格させない大学だったら、通ってもろくな所じゃないから、こっちから見切ってやりなさい!」

相手が変わると励ます言葉も変わる。

普段どんなにシャイな子でも、反抗的な子でも、話を聞きながら透き通った瞳でまっすぐに見返してきた。

その瞳に宿る光の中に、共に積み重ねてきた時間の意味を観たものだった。



振り返ったわけではないけれど、その二組のことが強く印象に残る。

世間では、あらゆることが平等に、あちこちで同時に起きている。

その中のどれに目がとまるかは、その人が何を見たいと思って生きているかによるのだろうな。




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できれば「楽して大金持ちになったまま充実感を味わいつつ栄耀栄華に暮らし続ける方法」とかを観たいものだと思っているんですが、まだ見たことがありません。