片桐先生があけた保健室の扉をくぐると、校長先生はそっとスミレをベッドに寝かしつけた。
力が抜けてダラリと垂れた頭を、慎重に枕に乗せる。
目をさまさまないことを確認すると、そのままそっと下がって、真理と入れ替わった。
不意に目を覚ましたスミレは、目の前に真理がいることに気づいた。
細い腕を伸ばして真理の首筋に伸ばしてくる。
そして、がむしゃらに真理にすがりついて訴えた。
力が抜けてダラリと垂れた頭を、慎重に枕に乗せる。
目をさまさまないことを確認すると、そのままそっと下がって、真理と入れ替わった。
不意に目を覚ましたスミレは、目の前に真理がいることに気づいた。
細い腕を伸ばして真理の首筋に伸ばしてくる。
そして、がむしゃらに真理にすがりついて訴えた。
「マリアンヌが、死んじゃったよ。死んじゃった。だから、ダメ。」
またしくしくと泣き始めた。
「そうか、マリアンヌが死んじゃうと思ったのね。」
「天井に、バンってあたるの。それから、ドンって落ちるの。痛い。血が出るの。おばあちゃん、死んじゃった。」
スミレの話は支離滅裂で、時系列も意味も、吹き飛んでいる。
スミレの話は支離滅裂で、時系列も意味も、吹き飛んでいる。
「うん、うん。マリアンヌが天井にぶつかっちゃいそうに見えたんだね。もしぶつかっちゃったら、ドンって落ちて、血が出ちゃうと思ったんだね。」
真理はその話を読みとり、読み込み、スミレに返して行く。
真理はその話を読みとり、読み込み、スミレに返して行く。
「ダメ。やめて!」
「うん。そうか。マリアンヌがどうにかなっちゃったらいけないから、やめてって思ったんだね。」
「やめて、やめて。ママ、血が出てる。おばあちゃん、死んじゃったの!痛い!痛いよ。蹴らないで。やめて!」
真理はぎょっとした。
まさか、母親に暴力を振るわれたことまで思い出しているのだろうか。
真理はぎょっとした。
まさか、母親に暴力を振るわれたことまで思い出しているのだろうか。
「わかった。もういいよ。よくわかったよ。マリアンヌはもう病院に行ったから、大丈夫だよ。血は出てないよ。痛くないって。さ、もう眠ろう。真理さん、だっこしているからね。もう安心だよ。」
真理は力いっぱいスミレを抱きしめた。
真理の右手が、赤ん坊をあやすように、トン、トンと静かにスミレの背をたたく。
真理の右手が、赤ん坊をあやすように、トン、トンと静かにスミレの背をたたく。
校長・教頭先生はいつの間にか席をはずしている。
保健室には真理と片桐先生しかいない。
スミレの泣き声が響いていた保健室だが、それほど間をおかず、ゆるくまわしてある扇風機のモーター音しかしなくなった。
離れたところから歓声が聞こえる。教師が鳴らすホイッスル。グランドでかけっこでもしているのだろう。
真理はそれが、本当はスミレと一緒に体育館でトランポリンをするはずだった1年1組のみんなだとは知らない。
真理はそれが、本当はスミレと一緒に体育館でトランポリンをするはずだった1年1組のみんなだとは知らない。
熟睡し始めたスミレを、そっとベッドに寝かせると、片桐先生に目配せして、真理は保健室をそっと出た。
そして、校長室を目指した。
そして、校長室を目指した。
時計はまだ午前10時半を指している。