それから暗くなるまで、私とかあさんは、やめてくださいませ〜と叫ぶ後藤さんといっしょに、あちらこちらの乗り物に乗り歩きました。パレードを見て、道を歩くミッキーさんと記念撮影もしました。ただただ楽しめばいい場所と時間が、あっという間に過ぎて行きました。
私たちは最後にギフトショップに寄って、買い物をすることにしました。かあさんは、おやじさんにと、くまのプーさんのぬいぐるみを選んでいました。いったい、おやじさんはどんな顔でこれを受け取るのでしょう。それから、いくつかの包みをつくってもらっていました。
私は、今日の記念にとあれこれ見たのですが、自分で自分に贈るものはなかなか決められませんでした。ふと思い立って、亡き融におみやげを買うことにしました。あの子には・・・目にとまったのは、ミッキーのネクタイピンでした。
似合うかどうかなど、どうでもいいのです。もしもあの子が生きていて、これを受け取ったら、どんな日に、どんなネクタイに合わせて使ってくれるかと、考えるだけで楽しかっただろうと思われました。「姉さん、僕はもう小学生じゃないんだからね!」なんて言ったかもしれません。
「後藤はいいの?」かあさんが尋ねました。
「はぁ。私は独身ですし、ご本宅の皆様は皆様ご立派にご成人なさっておられますし・・・。」
「え!?後藤さんって独身だったんですか!」私は失礼にも頓狂な声をあげてしまいました。
「はい。申し訳ありません。」
「いえ、いえいえいえ。失礼なことを言ってしまってごめんなさい!きっと、お仕事に夢中で、気付いたらチャンスを逃してしまっていたのでしょう。」
「なんと。弓子さんはお優しくていらっしゃいますね。そうではございません。私が冴えない男だと言うだけです。」
「そんなことありません。後藤さんは素敵な男性だと思います。」
他愛のない話をしている私と後藤さんを、かあさんはにこにこと見ていました。
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