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今ここで生きていることを楽しむためのブログ

物語

チャンスはその場で捕まえる 5

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 おかえりなさい。

 昨日・今日は「疲れたら休む」に集中して過ごしました。
 眠いと感じた時に眠ってみる。それだけのことなんですが、これまで「昼間から寝ているなんて病人みたい」と思って、眠くても我慢して起きていて趣味の時間にしたり、本を読んでいたりしたことにふと気付きました。趣味も読書も大好きなので、やっている間は充実しているのですが、その前に感じた眠さ・疲れが消え去るわけでもなく、そういうことが積もり積もって今を作っているんだろうなと感じたのです。

 休む時には病人みたいに休んでみる。もう少し続けてみようと思います。

 

 さて、物語は続きます。


 足もとにポトリと落ちた封書を取り上げてみると、しっとりと重く、厚みがあって、どうやらカードが入っているようだった。

 封を切る。やはり、そうだ。

 「いつもこちらをのぞいているあなたへの招待状
  あなたがまだ一度も味わったことがない、素晴らしいケーキができあがりました。
  完成を記念して、先着順で、このケーキをプレゼントいたします。
  ただし数に限りがありますので・・・」

 あの美しい場所からの招待状だ!

 あちらの人は、私の好みまで知っているのだろうか。まだ味わったことがない素晴らしいケーキだって!!そんなことを聞いて、無視できるはずがないではないか!!!

 ああ、どんな味なのだろう。どんな色をしているのだろう。フルーツがのっているのだろうか。ナッツが刻んであるのだろうか。香りは・・・どうだろう。口にいれるとふんわりととろけるんだろうなぁ。

 そうだ。確かに、風に乗って運ばれてくるあちらからの空気には、バニラの香りも混ざっている。バターの香りもする。ああ、食べてみたい!しかもプレゼントだなんて、見逃せようか。

 よし。
 私は決めた。行ってみよう。

 足もとと目的地とをバランスよく見るのだ。

 そして、無防備にふらふらとでかけるのではなく、準備をするのだ。

 絆創膏と消毒液だけでは対応できない事態があった。今度は湿布も持っていこう。添え木も包帯も用意しよう。それから、天気が急変するかもしれない。傘とカッパも用意しよう。寒くなる時のために上着を、熱くなる時のために半そでシャツも用意しよう。靴はどれがいいだろうか。途中で休むかもしれないから寝袋もあったほうがいいだろうか。食料はどうだろう。お金・・・お金はいるのかな。

 よし、あとはカバンに詰め込んだら準備OKだ。ああ、この小さなカバンでは入らない。大きなリュックを買いに行くのだ。

 ふと、準備の手を休めては、さまざまなケーキの様子を思い浮かべてみる。ピンクのクリームに、白い薔薇のクリームがのっていたら。大きなイチゴがのっているのはもっと大好きだな。最近はマンゴーのムースもおいしい。カシスの酸味も捨てがたい・・・ああ、どんなだろうか。見たいなぁ。食べたいなぁ。

 ようやく大きなリュックを手にいれ、ごちゃごちゃと準備をした品物を詰め込んでいると、また耳元をヒュッと何かが通り過ぎた。

 今度はすぐに、封書が来たことがわかったので、ワクワクしながら開封してみた。

 「いつもこちらをのぞいているあなたへ
  このたびはたくさんの方にお越しいただいて、ありがとうございました!
  世界一美味しいケーキとお褒めいただき、大変喜んでおります。
  おかげさまで、用意したケーキはすべてプレゼントすることができました。」

 ああ!
 終わってしまったのだ。
  
 なんてことだ。

 どさり、とリュックを落として、ふらふらと窓辺に戻った。
 窓の向こうの美しい場所は、前回見たときよりも遠くに見えた。霞がかかったようにぼんやりとして、鮮やかさが少し失われたような気がした。

 その時になって、自分は大きなチャンスを逃したのだということが、ようやく理解できた。

 窓の向こうには、相変わらずたくさんの人が歩いている。あの中の何人が招待状を受け取ったのかはわからない。でも、受け取った人の何人かは、受け取ってすぐに行動を起こしたのだ。すぐに窓を乗り越えて、美しい場所に向かって歩き出したのだ。

 その人たちは、もしかしたら、いつ招待状が来てもいいように、でかける準備を済ませて待っていたのかもしれない。

 あるいは、準備はいらないと腹を括って飛び出したのかもしれない。

 どちらにしろ、私のようにぐずぐずとしていなかったのだけは確かだ。

 チャンスがきたら、準備ができるまで待っていては出遅れるのだ。
 チャンスは、その場で、捕まえるんだ!

 自分がものすごく無知で、愚かに思えた。
 いったい、私は最近、なにをしているのだろうか。あの、美しい場所に気付いてからというもの、私はたまらなく不幸な気がする。
 何も気付かなければよかったのに。そうしたら、壁のこちらで平穏な毎日を送れたのに。

 悔しいのか、悲しいのか、よくわからない、まだ名づけられていない感情が、私の心を支配した。

 涙が、粒のまま、ポロポロと落ちて、地面をぬらした。

 もしも私がその時に外を見ていたら、あの美しい場所が手を伸ばせば届くくらい近くまで寄ってきてくれたことに気付いたろう。でも、私はその時、外を見なかった。

 さっき取り落としたリュックのところに戻り、ぺたりと座り込んで、地面のひんやりとした冷たさを足に感じながら、残りの品物を詰め込んだ。

 詰め終わると、窓のすぐ脇に、リュックを立てかけた。

 「次に招待状が来たら、きっとすぐに出発しよう。」と、心に誓いながら。

 「いい子だ、いい子だ。」
 そんな声が聞こえたような気がして、あたりを見回した、空も、背中のほうも見たけれど、誰もいなかった。ふわり、と髪を撫でられたような気もしたけれど、やはり誰もいなかった。

 錯覚だな。風が吹いたのだろう。

 私はリュックの横に座って壁にもたれかかり、眠ることにした。

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バランス

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 おかえりなさい。

 行楽日和の一日でした。おでかけした方も多いのではないでしょうか。いかがでしたか?存分に楽しめましたか?リフレッシュされましたか?

 最近書きたいことが溜まってしまいまして(笑)、今日はどれにしようかしらと迷います。まるでハーレムの王様もかくや、という気分です。

 2回分書いた物語の続きもどんどん構想がまとまって、書きたいよ〜とウズウズ。ほかにも、さまざまな気付きや、出会いや、シンクロニシティーが続いています。Hikariは体調が悪くなると、そういう方向のことがよくなります。鋭敏になるというほうがいいかな。不思議ですね。

 

 さて。
 「物語」のカテゴリーを新設した記念に、今日は前回の続きを書きましょう。


 こわいね、こわいね。人間はこわいね。
 こわいね、こわいね。壁の向こうはこわいね。

 前にも一度失敗しているだけに、今度の恐怖はなかなか去ってはくれなかった。長い混乱が続き、からだの震えも止まらなかった。

 いったい、どうすればいいというのだ。
 前を向いていたら躓く。足もとを見ていたら目標を見失う。

 ああ、そうか。

 ピタリと震えが止まった。

 バランスだ。
 両方、半分ずつすればよかったのだ。どうして、どちらか一つしかできないと考えたのだろう。次の1歩だけでなく、5歩くらい先まで石がないかを確認したら、次は行く手を見ればいいのだ。バランスよく見ればいいのだ。

 通り雨がやんだように意識が透明になり、つい5秒前までは恐怖に震えていたことが信じられないような気がした。

 それにしても、恐ろしいのはあの「理不尽の風」だ。あればかりはどうしようもない。いつ、どこから、どのくらいの強さで吹いてくるのかまったく分からないのだから。それに、どうして私をめがけて吹いてくるのだ。他にも・・・

 他にも?

 そうだ。他にもたくさん、人がいたではないか!!!

 突き動かされる思いで、窓辺に走り寄った。そうして、ぐいと身を乗り出して、窓の外を見た。

 向こうには、あの美しい場所があり、そこへ向かって無数の人が歩いているのが見えた。もっとよく見ると、ずいぶん長く歩いたのか疲れきっている人がいるかと思えば、まるでスキップでもするように楽しげに歩いている人も見えた。たったいま失望の小石に躓いて転んだ人もいれば、さきほどの私のように、一目散に壁に逃げ込もうとしている人も見えた。

 そうだ、壁・・・。

 窓から180°視線を移すと、そこには無数の壁が建っていた。横にも建っている。

 よく見れば、窓の向こうにもたくさんの壁がある。どの壁にも向こう側の風景が描いてあるので、いままでそれと気付かなかっただけだったのだ!!!

 壁の裏には人がいた。窓から向こうを見ている人、窓の下にうずくまる人、壁を蹴っている人、壁の内側に安住している人。今まさに壁を乗り越えた人、そういえば、住人のいない壁もある。

 これだけの壁と人との存在に、いままで気付かなかったことが信じられなかった。

 そうか。
 これまで私は私の壁と私自身としか見ようとしていなかったのだ。だから見えなかったに違いない。

 これもバランスだ!

 人ばかり見ていては自分が見えなくなる。
 けれど、自分ばかり見ていては、他に人がいることに気付けないのだ。

 改めて窓に寄り添い、向こうの美しい場所を眺めた。

 驚くことに、明らかに、美しい場所は以前よりも近くにあった。何かがキラキラ光っていると思ったのは、黄金でできた宮殿の屋根がお日様に照らされているからだった。耳を澄まさなくとも、そこで暮らす人々の笑い声が響いてきた。甘い花の香りとだけ思っていた匂いには、なにやらおいしそうな食べ物の香りも混ざっていることに気付いた。しっとりとやわらかくからだを包み込むだろうと思われる服が干してあるのも見えるではないか。

 私の壁の位置がずれたとは思えなかった。

 どうやら、2度だけ向こうに行ってみたいと試しただけだが、その間に向こうの美しい場所が、私の方へ近づいているようなのだ。

 そのようなことがあるのだろうか?

 もっと何か見えないかと眼を凝らしている耳元を、ヒュッという音が通り過ぎ、足元に何かがポトリと落ちた。胸がドキリドキリと鳴るのを感じながら、足もとを見ると、それは1通の封書だった。

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矛盾

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 おかえりなさい。

 Hikariのカラダを気遣ってくださって、みなさんどうもありがとうございます。

 今朝、起きてもやっぱりダルかったです。休みたいなぁ、眠っていたいなぁ、何もしたくないなぁ、と思いつつ、今日はチームのメンバーが一人お休みだと言っていたのを思い出し、重たいカラダを引きずるようにして出勤しました。

 ところが。
 職場の敷地に入った瞬間に背筋が伸び、子供たちの顔を見た瞬間に、自分があんなに辛かったことをすべて忘れてしまいました。で、子供たちが帰ったとたんに思い出し、会議やだよぉ〜帰りたいよ〜に戻りました。

 よくいえば、プロ根性。悪く言えば・・・
 こんなふうにして何年も過ごしているのです。
 気がついたときには、Hikariはことごとく使い果たされていることでしょう。

 

 さて。
 物語は続きます。

 こわいね、こわいね。人間はこわいね。
 こわいね、こわいね。壁の向こうはこわいね。

 身を縮ませて耳を塞ぎ、目を閉じ、からだを硬くしてしばらく震えていたけれど、いつか恐怖は遠のき、力が抜けてきた。

 目を開けると、見慣れた壁が見える。耳を澄ますと、風の音が聞こえる。上を見上げると、青い空が広がっていて、この空は、あの鮮やかに美しい場所でもやはり同じように青いのだということを思い出させる。

 あの美しい場所はまだ見えるのだろうか。

 みるだけなら、怖いことは起こらないだろう。

 きっと、大丈夫。

 そうして、私は、おそるおそる窓辺に戻り、向こう側に目を凝らした。

 相変わらず、あの鮮やかに美しい場所はそこにあって、前に観たときよりも一層、鮮やかさを増しているようだった。何かがキラキラと輝いており、甘い花の香りはいっそうはっきりと伝わってくる。

 こんなにも美しかっただろうか。
 こんなにも魅力的だっただろうか。

 私は目を疑った。

 やはり、あそこは魅力的だ。あそこに行こうとしていた時、私はエネルギーに溢れていた。何でもできるように思えた。あれは、まやかしだったのだろうか。

 もう一度、行って、みようか。

 そうだ。前回は知らない間にふらふらと出て行ってしまったからいけなかったんだ。もっと意識的に、注意深く、石に躓いたりしないようにしてでかけたらいいのだ。怪我をしたときに備えて、絆創膏も持っていこう。

 あと、一度だけ。今度は、きっと、大丈夫。

 私は右のポケットに絆創膏を入れ、ズボンのポケットには消毒液も入れて、落ちないようにボタンを留めて、ゆっくりと窓から頭を出してみた。慎重に四方をみまわし、何も危険がないことを確認して、ゆっくりと、まどから壁の向こうへ降りた。

 慎重に、慎重に。足もとに転がる拒絶や失望の石に躓かないよう、丁寧によけながら歩いていった。

 ふと、前を見ると、そこは真っ暗な森ではないか!

 あの美しい場所ではない。私は知らない間に森に向かって進んでいたのだ!そうか、足もとばかりを気にかけて、行き先を確認しなかったのだ!

 おびえる私の背後から、強い理不尽の風が吹き付けた。その風はあまりに強かったので、私は不意を突かれ、思い切り転んでしまった。

 足首が、ちりちりと痛んだ。

 ああ、これは骨が折れたのかもしれない。骨折は消毒液や絆創膏では治せない。この足では、もう一度あの美しい場所を探し出すなんて不可能だ。もう、一歩も進めない!

 そうして私は、わけのわからない混乱を抱えたまま、壁に向かって一目散に走り帰った。

 一歩も前に進めないはずの足が、走って逆戻りするには十分な力を発揮している矛盾に気付きもせずに。

 壁の窓から飛び込むように安全地帯に戻って、肩でゼーゼー息をしながら口走る。

 こわいね、こわいね。人間はこわいね。
 こわいね、こわいね。壁の向こうはこわいね。

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こわいね、こわいね。 5

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 おかえりなさい。

 昨日の昼から、体調が悪いのです。突然、本当に唐突に、カラダからガクッと力が抜けて、ものすごくだるくなり、力が入らないままになってしまいました。

 重い。だるい。カラダの芯まで疲れていて、何もしたくない。お腹は減るし食欲もある。なのに、食べ始めるとすぐにお腹がいっぱいになる。

 神様教えて!これな何のサインなんですか。意味が読み取れません。

 


 ところで。

 昨日の記事を読み返して、これは誤解を招くなぁと思ったことがあるので、補足します。

 思いやりは、相手の状況を知ってから。こちらの想像に基づいた思いやりでは、本当の思いやりではないよね、と書きました。

 でもね、相手の状況を想像することを否定しているのではないのですよ。だって、まずは想像しなくては、言葉もかけられないじゃありませんか。
 ただ、相手の状況を知ろうとし、知った内容によって自分の想像を修正していくのを怠らないこと。そういうことでした。

 それはそれとして。今日は物語を一つお話しましょう。


 私の、心の中には、壁がある。

 この壁は、ある時「もう誰にも私の人生を土足で踏みにじらせるようなことはしない」と誓った時に建てた壁で、けっこう高くて厚い。

 この壁には見通しのよい窓がついていて、壁の向こうの様子はとてもよく見えるし、ガラスがはまっていないから、色も、香りも、温度も、そのまま感じ取ることができる。

 この壁の必要性を説く古今のマスターたちの言葉をペンキにして色を塗り、知識を絵の具に窓の外に見える光景を壁に描いておくうちに、いつしか自分が壁のこちら側で生きていることを意識しなくなっていた。

 意識しなくとも、壁は私をとてもよく守ってくれた。

 誰かが、私のいる場所に踏み込んできて、勝手なことを言ったりしたりすることはなくなった。私は、誰かが入ってきて壁のこちら側の私を気に入ってくれるのではないかという期待を捨てるかわりに、気に入ってもらえると思ったのにあてがはずれた、という失望を味わうことがなくなった。

 私も壁の向こうに出て行くことがなかったので、誰かの懐に飛び込んでこそ築ける関係を諦める代わりに、「私の領域に踏み込まないで」と拒絶される恐怖を遠ざけることに成功した。

 壁はますます細かく描きこまれ、向こう側の世界と同じように見えるくらいになった。ちょうどそのころ、窓の向こうに、いままでみたこともないような世界が広がり始めたことに気がついた。

 それは、色鮮やかな美しい世界で、心地よい乾燥と温かさをしていて、花の香りがした。窓越しにそちらから吹く風がとどいて、温度と香りとを運んできた。

 最初は、蜃気楼だろうと思った。あのように美しい場所があるはずがない。けれども、蜃気楼に香りはなく、温度はない。それが伝わってくる以上、あそこに見えているのは現実に存在しているのだと認めないわけにはいかなかった。

 次に、あの美しい世界は私にはふさわしくないのではないかと考えた。けれども、それまでに積み重ねた知識が、智恵が、その考えは間違いであると教えていた。なにもかもが、「あなたもいらっしゃい」と手招きするようだった。

 窓から身を乗り出して、その美しい世界を見つめるのが、新しい生活となった。なんて美しいのだろう。なんて豊かなのだろう。あそこにいけたらいいな。いつかいけるかな。

 もしかしたら、私にも、いけるのかもしれないな。

 そんなことばかり考えているうちにいつのまにか自分が窓を乗り越えて、向こうの世界に近づこうと歩いていることに気付いていなかった。

 でも、向こうの世界は私が近づいていくことに気付いていて、ますます鮮やかさを増し、ますます誘いの手を振っていた。

 壁の向こうの世界では、何もかもが力強かった。あらゆる可能性が現実になる力を持って、選択されるのを楽しげに待ち受けていた。私は、生まれたての子供のように、自分は何でもできると確信した。そうして、何でも試み始めた。

 その時、かくんと何かに躓いて、私は我にかえった。自分がいつの間にか壁から遠く離れて歩いてきてしまっていたことに気付いた。そこは美しく鮮やかで芳しく温かいけれど、足もとに失望や拒絶の石も待ち受けていた。私は小さな拒絶の石につまずいて、転んだのだった。

 それはあまりに小さくて、またぎ越えることもできるのに、子供の頃の・・・壁を建てる前の・・・辛い記憶を甦らせた。

 一番大事で愛されたい相手に抱き上げられようと諸手を広げて走り寄ったのに、「お前は嫌いだ」と突き飛ばされた記憶。どのように、何度、試みても、決して受け入れられなかった痛み。

 私は、慌てて立ち上がり、美しい世界に背を向けて、一目散に壁に向かって帰って行く。

 壁にたどりつき、元の世界にもどって、息を切らせながら身を縮めてつぶやく。

 こわいね、こわいね。人間はこわいね。
 こわいね、こわいね。壁の向こうはこわいね。

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