「いい?よく聞いて。
人生最大の不幸はね、生まれた瞬間から6歳までの間に親から愛されなかった記憶を持つことなの。
もしも事情で最初から親がいないなら、他の誰でもいい。
とにかく、この人と思う誰か1人でいい。
徹底的に愛されて、その愛を伝えられていれば、その子は人生何があっても強く生きていけるようになるの。
その時もらった愛・・・安心感とか、守られているという実感とか、注目されているという自信とか、失敗しても嫌われないという保証とか、自分って好かれるんだなという経験のことなんだけどね・・・それが、原動力になって、人は成長して、強くなれるものなの。

でも、この6年間で親からも誰からも愛されなかったり、愛してくれる人が次々に変わったりする経験をしてしまうと、その子は心に大きな穴が空いてしまうのよ。
その穴からは不安や不信や疑惑や、自信のなさや、自暴自棄しか生まれない。
そういう子はね、残りの人生をその穴を埋めることだけのために生きなければならなくなるの。

新ちゃんの周りにいない?とにかく不安だらけの人。
何をするにしてもしないにしても、どうしよう、どうしようって悪いことばかり考えてしまって何もできない。
人目を気にして、自分が人からどう思われているか、そればかり気になって、一番よく思われるにはどうしたらいいかとばかり考えて、前に進めないの。
必死で人に気に入られようとするから、自分はいつも努力しているんですって強く主張したり、だからいろいろ配慮してもらって当たり前ですって言ったり、思っていたりしてしまうの。頑張りすぎた結果ね。
その人のそばにいると何だかこっちが悪いからその人がうまくいかないような気持ちにさせられてしまうわ。
罪悪感を持たされちゃう。
このタイプの人はね、心に空いた穴を、誰かに埋めてもらいたくて、距離が近くなるとまとわりついてしまうのね。
何かしてもらうために、本当に必死に尽くすのよ。なのに、やればやるほど鬱陶しがられて嫌われてしまうの。
切ないわね。

もしも思い当たる人がいたら、今度、子どもの頃のことを聞いてごらんなさい。
親御さんとの関係、きっとうまくいっていないから。親の夫婦仲が悪かったとか、しつけに厳しすぎたとか、そういう話が出てくるわよ。


それから、人間関係を避ける人っていないかしら?
どちらかというと、上司を思い浮かべた方が見つけやすいかもしれないわね。
家庭より仕事って人が多いから、出世するのよ、途中までは。

このタイプの人が上司になると、部下とか取引先の欠点ばかり目について、厳しいことばかり言うの。
自分は人一倍仕事に努力してきたという自負が強いから、なおさらなんだけど、そんなことを言われたら相手がどう思うか?って想像する力が乏しい面があるの。

ともかく、充分な距離を保って、趣味とかでたまに会う程度ならとてもうまくやれるのに、上司部下とか、あれこれ綿密な相談が必要な取引とか、とりわけ恋人とか家族とかいう親密な関係になると、もう全然うまくいかない。
思い当たる人がいたら、その人にも子どもの頃のことを聞いてごらんなさい。

こういうタイプの人はね、子どもの頃の傷が痛すぎて、もう誰も信じることができなくなってしまっているの。
また捨てられる、どうせ裏切られるとしか考えられないから、親密にはなれないの。
いえ、考えると言うのは違うわね。人とはそういうものだとしか見えないの。

だからね、自分の心理構造の特性に自覚がないのね。頭のいい人が多い気がする。人間関係が人とどうも違う自分を分析して、自分は孤独を愛するのだとか、自由が好きなのだとか理解していることが多いわ。それで、大切な孤独や自由を守るために、自分の側で負荷をかけてくる人を遠ざけようとするのは当然だって思うのね。

実際、こういう人の目には、近寄ってきた相手って、自分にまた穴を空けるかもしれない危険人物なわけだから、よく見えるはずがないの。
「だらしない」「いい加減だ」「こちらの気持ちがわからない人だ」というふうにしか、相手が見えないのね。第三者が見ると、ぜんぜんそんなでなくても。かえって思いやりにあふれていればいるほど、ひどいひとに見えてしまうの!
言われる方は、自分の誠意が伝わらないばかりか、ひどいヤツだと言われるんだから、たまったもんじゃないわ。離れて行くのは当然よね。

それに、このタイプの人は、自分の感情を感じるのが怖いの。
そりゃそうよ。感じてしまうと、孤独とか寂しさとか切なさとかやりきれなさとか恨みとか憎悪とか、そんなものが穴の中から吹き出してきて止まらなくなるのよ。
だから、最初から感じないように、感情に蓋をするの。
結果として、理屈っぽくなる上に、自分の意見だけが正しいと主張して譲ってくれない。
そうなると、上司として部下をまとめるには、難しい面があるの、わかるでしょう?

織田信長みたいに、ある時部下たちが結託して追い落としを謀られるみたいな下剋上を起こされるのは、こういうタイプなんじゃないかしら。
でも、遡って考えると、そんな目に合うような言動をしてしまうのは、その人自身のせいではないのよ。
ほんと、切ないわね。






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