話は1月末にさかのぼる。
くまさんの誕生日に何をプレゼントしようかと、そろそろ考え始めたが、ネタが尽きて思いつかない。
 
「3月1日は誕生日ですね。」
「そうですね。」
「何か欲しいものはありますか?」
「・・・・・・ある。」
「おお!言ってください。もう思いつきません。」
「・・・・・・GPS。」
「じーぴーえす?ケータイについているあれか?」
「まぁ、あれの、すごいやつ。」
 
道のない山奥に持って行き、遭難しそうなブリザードの中で自分の位置を確認したり、ここにいるぞ!助けてくれ!!という信号を発信したりするらしい。そりゃすごい。持っているとよさそうだ。
しかし、明らかに高いじゃないか。
 
「いくらくらいするんですか?」
「7万とか8万とか。上は天井知らずですね。」
恐ろしい話になった。
聞かなきゃよかった。
 
「そういうマニアックなものは、自分でよく見て選んでください。」
「もちろんですよ。選んで、支払はあなたがしてくれるというのでいいですよ。」
いくないですよ。
実物見たらいいのがほしくなるに決まっているじゃないか。
 
このままこの会話を続けると、私にとって不都合な結果をまねきそうだったので、途中からすっとぼけて誤魔化した。
さて、もうちょっとリーズナブルなプレゼントをはないかとアンテナを張ることにした。
 
ミュシャ展パンフレットアンテナは意外とはやく、翌日の朝、優良情報をキャッチした。
「ミュシャって、前から好きなんだよね。漫画みたいなのに洗練されていて美しい。でも、平たくない。」
「そうだね。じっくり見たことはないけど、印象的な眼をした女性を描く人だよね。」
「もう10年以上ちゃんと観てない。いい展覧会があったら行きたいもんだよ。」
「へぇ。あったらいいね。」
 
そんな会話を交わした日、用事で大きな駅を通った。
目に飛び込んできた巨大ポスターは六本木で開催される『ミュシャ展』のものだった。
 
これだ!
前売りチケット2人分をプレゼントすることに即決した。






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