6年前に1年間だけ一緒に仕事をした青年がいる。彼もまた、ひどい花粉症だった。大学進学を機に、潮風香る遠い故郷を出て上京したら花粉症を発症したのだそうだ。症状が出る期間は私よりずっと短かったが、症状は重く、スポーツマンとして活動に支障が出るほどだった。

その青年が、10代のころからお世話になっている整体師が花粉症の治療をしてくれるようになったと言うのだ。

薬は一切使わない。
多少の苦痛を伴うのと、治療を受け始めたら服薬をやめなければならないのだと言う。
実際に、どのような治療なのかを聞いて、目が点になった。

そんなことで花粉症が治るわけがない。
あなたが本当に治ったら、受けてみないでもないけど、実に胡散臭い!と笑い飛ばした。

2か月後くらいだったろうか。
青年が花粉真っ盛りの時に、笑顔で言ったのだ。
「かなり楽になりました〜!」

即決だった。
私もその治療を受けることにした。

ちなみに、青年はこれまで何十人にもその治療を紹介したが、実際に受けることにしたのは私だけだそうだ。私も、これまでに「花粉症が辛くて…」と嘆く何人もの方に自分の体験を話したが、想像しただけで辛くて、そんなものに耐えるくらいなら花粉症の方がマシとおっしゃって、誰ひとり体験した方はいない。

なのに、その時の私は、具体的に治療方法を聞いていたにも関わらず、辛さを少しも想像しなかった。普段は想像力が豊か過ぎて、臆病で困るほどなのに。


初めてその治療を受けた時のことは、きっと生涯忘れないだろう。
約1時間の治療の後、予告どおり、食欲はゼロ、全身だるく、発熱した。
翌日になっても、鼻が完全に詰まっているのに鼻水が蛇口をひねったように出るのは変わらなかった。目もかゆすぎて、眼球まるごと取り出して、洗濯機で洗いたい!と思った。

1週間後、2度目の治療に訪れた。
何も変わらないと訴えると、「あなたは重症中の重症です。1度や2度では変わりませんが、絶対に治ります。」
どこから来るんだ?その根拠なさそうな自信は。
また1時間の治療を受けた。帰宅後はまた発熱だ。38℃ほどの熱が一晩出続けた。

さらに1週間後。うんざりしながら、でも後戻りもできない気がして、治療に出かけた。
また1時間の治療。治療の苦しさは同じだが、今度は発熱しなかった。
この間、指示通り、アレグラは飲んでいない。目薬も点鼻薬も使用しなかった。薬は全部禁止なのだ。

翌朝のこと。
久しぶりに鼻水がほとんど出ない朝を迎えた。
あれ?
目も、それほどかゆくない。
あれれ?
丁度、花粉も終わりの時期に近付いていた。
この年はこのまま、治療とも花粉症ともバイバイした。

3年前。
また12月がやってきた。
別のことで体を壊し、その整体師を訪れた。内臓全体にかなり機能が低下してしまっていた。
「ところで、花粉は?」
「そろそろシーズンだと思います。」
「それじゃ、ついでに、やっておく?」
「はい。お願いします。去年は最後の方、かなり楽になったので。」
「ほっほっほっ。だから言ったでしょ?」
「で、去年は何度お願いしても教えてくださらなかったけど、理論を知りたいのです。どうしてアレで花粉症の症状が出なくなるのですか?」
「いいの、いいの。知らなくていいの。じゃ、やるよ。」
「ぎゃ〜〜〜!」

2週間後、再訪した時、ようやくその「理論」を教わることができた。
先生にしては破格のサービスだ。
従順な患者へのご褒美だったのだろうか。
はー。ほー。なるほどぉ。
そういうことなのかぁぁぁ。

この年の、この2度目の治療を最後に、この治療は受けていない。自分でできるようになったこともあるが、必要がなくなった。
治療を受けなくても、花粉症の症状が出なくなったからだ。

昨年、足底筋膜炎を患って、久しぶりに整体院を訪れた。
「先生、私、花粉症が出なくなりましたよ。」
「ほっほっほっ。でしょ?いいですね。どれ、見せてごらん。うん、これなら大丈夫。膵臓はダメだけどね。」

お墨付き。






ポチッと応援お願いします