どうも、勘助です。
かあさんもおやじさんも、ヒツジもどきの後藤さんも絶句しました。私は、ばあちゃんが座った時、もしやと思ったことが当たってしまい、当惑していました。

人間、命のともしびが消えようとする時、お尻の肉が薄く薄くなっていくのをご存知でしょうか。帳尻を合わせるといいますが、命の帳尻の尻の部分が、命と一緒に消えていくのです。その薄さを、私は感じとってしまいました。

「お、大奥様。そのようなこと、後藤は聞いておりません。」
「それはそうでしょう。誰にも話していませんもの。医者たちには口止めしましたしね。自分のことを他人に先に話されてたまりますか?」

「そういうことではございません。診断は確かなのでございますか?セカンドオピニオンは?治療の余地はないのでございますか?」ヒツジもどきはばあちゃんにとりすがって、必死の様子です。でも、ばあちゃんは笑っています。

「落ち着きなさい、後藤。いい歳をして見苦しい。できることはしたつもり。病院で管につながれてでも生きたいならば手はあるらしい。でも、私がそんな質の悪い時間に耐えられると思って?ムリムリ。人生楽しまなくちゃ。」

「大奥様…」ヒツジは言葉が継げなくなりました。
「で、花亜。私ね、庶民の暮らしがしてみたいの。物や人が私に合わせるのではなく、私があるものに合わせる暮らし。やっていないのはそれくらいだから。」

「それならお母様、ここより病院の環境に合わせてお暮しになれば、お楽しみもでき、お命も伸びますのに。」かあさんは笑顔で言い返しました。
「いやよ。病院には…」ばあちゃんの答えはよく聞こえませんでした。







人気ブログランキングへ