どうも、勘助です。
翌日はばあちゃんがやってきました。
このばあちゃん、かあさんが言っていたとおり、本当に只者ではありませんでした。

店に入ってきた時、ばあちゃんはスヌーピーのTシャツに木綿のハーフパンツ、クロックスといういでたちでした。「ボンジュール、花亜。あなた老けたわね。こちらが旦那様?まぁ、熊さんみたいね。」

新装開店の日に、大きな花束を抱えてやってきた後藤というヒツジもどきが後から入ってきました。「花亜様、大奥様をご案内いたしました。」「ごくろうさまでした、後藤。」かあさんが答えます。なんだか、なんだか…

「長くごあいさつできずに申し訳ありません。夫の久弥です。」おお。親父さんがそんな名前とは知りませんでした。ばあちゃんは「久弥。私の息子。めんどうをかけます。」と、少しの遠慮もない声です。

どうぞおかけくださいとおやじさんに言われて、ばあちゃんは私に腰掛けました。なんで私なんだ!ん?あれ?おや?
これは、もしかして…もしかして………

かあさんがようやく声を出しました。「お母様。なぜ那須のお兄様のところや花音の本宅ではなく、こちらをお選びになりましたの?私のこと、お嫌いなのでしょう?私、子どものころより一層扱いにくくなりましてよ。」

かあさんの声は、少しも怒っていません。緊張も、失望もありません。不思議な声です。「ああ、それはね。」ばあちゃんがまた、不思議な声で答えます。
「私、癌であとわずかな命らしいの。だったら一番スリリングなところで暮らそうと思って。」







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