「あのぉ、お声掛けしてよろしいでしょうか?」
なんて美しい日本語だろう。管理職の机の前に並んだパソコンで仕事をしていた私は、耳が吸い寄せられるようにその言葉をつかまえた。

「ああ、いいですね。その言い方も、声も、そういう言葉かけの必要を知っていることも、とてもいいですね。」
思わず、賛辞を送った。

今年採用されたばかりの女性が、管理職に向かってかけた声だった。
管理職も優しい笑顔で彼女の言葉を受けている。
あまり器用ではなく、仕事ものんびりの彼女だけど、この言葉はステキ。

「あら、Hikariさんに誉められちゃったわよ。よかったわねぇ。」
管理職は彼女と私を両方一度にからかってから、言葉を添えた。
「今のその気持ちと習慣、何年たっても忘れないでね。」

そうなのだ。そこが大切なのだなぁ。
「本当、反省です。私なんて図々しくなっちゃって、お忙しいと分かっていても、聞いてくれなきゃ困ります!みたいな勢いで突っ込んでいきますもん。」

「そうしてくれないと、いつまでも話せないって状況もありますからね。」と管理職は、既に別の書類に目を通しながら返事をする。本当はパソコンが終わったら話し合わなくてはならない用事があったのだけど、言い出せない。

「あのぉ、お声掛けしてもよろしいでしょうか?」
恐る恐る私が言うと、管理職2人は同時にお顔をあげて、爆笑し、背筋を伸ばして座り直す。「よしっ。よく言えました。なんでも聞くわよ!!」
なんです?その気合は??





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