「お客様を見てください。」
こう指示されたということは、お客様のお世話をしてくださいという意味になる。ところがナナは、ほんとうに、ただ、見ている。

「すぐに、皆様をお部屋へご案内してください。」
こう指示されたら、たいていの同業者はこの場にいてはまずいと判断する。
ところがナナは、なぜ今部屋へご案内なのかわからず、ずっとそこにいる。

「そんな言い方された相手の気持ちになってごらん。たとえばあなたが言われたらどうです?私、いつもあなたを叱ってばかりですけど、どんな気分?」
「正直、ものすごく気分悪いです!」

ああ、そうでしょうとも。
「でしょう?でもね、あなたの気分はどうでもいいんです。なぜなら、私たちはお給料をいただいて仕事をしているんです。お客様を傷つけてはダメなの!」

厳しい注意をしながら、がっくりくる。
あなたが「正直ものすごく気分悪く」なるような注意を、している側の気持ちも最悪だということが、ナナにはわからない。

トラブルメーカー。もう職場では誰もナナとは組みたがらない。管理職も途方に暮れた。クビにするにも段取りがいる。誰にやらせるか。そのとき彼らは丁度いいすき間家具があることに気付いたわけだ。

ナナがそんなふうなのは、性格が悪いからではない。誰よりも真面目で、一生懸命だ。こうも結果が伴わないと、ナナも辛いだろう。しかし、失敗感や困り感、苦手感がない。ナナの脳機能が、そういうふうにできているからだ。





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