
気が付くと、あきさんはフワフワのベッドの中にいました。
お日様の香りがするような、真っ白で軽く、温かな布団にくるまれていました。
背の高い窓には明るい太陽がのぞいていて、まぶしくてもう一度目を閉じたほどでした。
ここは、どこだろう?
ああ、そうだわ。私は未来さんのおうちに来ていたのだった。
私には何でもできる。何をしてもいい。何をしようか。
そんなことを考えているうちに、眠ってしまったようでした。
でも、あれも夢だったのかしら?ここは本当に未来さんの家で、未来さんとまたお話ができるのかしら?
かすかな不安を感じて、あきさんは目を開けました。
「お目覚めかしら?お食事もしないで眠ってしまったから、起こそうかとも思ったのだけど、あまりよく眠っていらしたので、そのままそうっとこちらにお連れしたのよ。」
未来さんでした。
ああ、よかった。
またお話ができる。
未来さんの後について、2階らしい寝室を出て階段を下りながら、あきさんはふと小さなひっかかりを感じました。
私、重たいのよ。
起こさないようにそうっとお連れしたって、どうやって?
未来さんは90歳くらいに見えるわ。私を抱っこしてここまで連れてきてくれたのかしら?まさかね。それならどうやって私を起こさずに2階へ??
昨日も座ったソファーに腰掛けて、あきさんはぼんやりと考えていました。
ここへ来てから、空腹を感じません。
疲れも、イライラも感じません。
私は本当に生きているのだろうか?と思った端から、私が生きている実感を持つのは、空腹や疲れやイライラなのかしら?と思ったりします。
「未来さん。この世は、ものすごく美しいですね。」
あきさんは唐突に、そんな話をしてみたくなりました。
「確かに美しいと思うわ。あきさんは何を美しいと感じたの?」
「つながりが。」
「つながり?」
「ええ。私ね、さっき、夢を見たんです・・・」
あきさんは、体を失って、存在だけ、意識だけになったようでした。
自分がとても薄く大きく広く、広がっていることがわかりました。
無限かと思われる青黒い宇宙に、たくさんの星があって、それぞれが輝いていました。
あきさんに見えない星はひとつもありませんでした。
どんなに小さくても、他の星の陰にあっても、あきさんには全部見通せました。
その星のひとつひとつに、とてつもない愛を感じるのです。いとおしくて、いとおしくて、抱きしめ、守り、支えてあげたくてたまらない気がしました。
星たちには、輝く部分と、暗く隠された部分がありました。
あきさんは、その輝く部分がより明るく、透明に輝くようにと思いを注ぎました。
星たちはあきさんの思いに応えるように、明るく輝きました。でもどの星たちも、自分の暗い部分のことは、恥じたり、見たくないものと思いたがっていました。
あきさんは、星たちのそんな気持ちがとてもよく分かりました。その暗い部分も、あきさんにはかわいらしく、いとおしい部分でした。でも、星たちがそれを今は見たくないと思うなら、見たくなるまで無理して見なくてもいいと思ったのです。
あきさんは、広い宇宙を見渡し、2つの星が、互いの暗い部分を隠すために都合の良い組み合わせをみつけて、金色の糸で結び付けました。2つの星は互いに引き寄せあい、補い合って、ますます強く輝きました。
あきさんは、その仕事がとても気に入りました。
つぎつぎに2つの星をみつけては結び付けました。ある星は、一つ目の結びつきの役目を終え、二つ目の結びつきが必要になりました。あきさんはそれにすぐ気付いて、次の星を探しました。
またある星は、自分の暗い部分を見つめようとしていました。あきさんは、一度結んだ糸を切って、その星に時間を与えました。
後回しにしてしまった星には、ごめんね待たせて、の気持ちをこめて、特にステキな星を探し、金の糸で丁寧に結びました。
そのうち、あきさんは、1つの星に1本の糸ではもったいないような気がしてきました。
星たちの願いに耳を傾けました。これが不安だ、これが怖い、そんな声を聞き取ると、あきさんは大丈夫だよと、他の星を見つけては結んでやりました。
上と下とを結び付けました。右と左とも結びました。過去と未来とも結びつけました。
そんなことをどれほど続けたでしょう。
ふと見上げると、宇宙は、あきさんが結んだ金色の糸で、キラキラと輝きわたっていました。これまでに一度も見たことがないような、美しい光景でした。
そこへ、1つの大きな星が現れました。
その星は、暗い部分を持っていませんでした。
自分の力で輝き、時に暗い部分ができても、それを見つめて、自分で輝かせることができるまで、根気強く自分を労わっていました。
この星には、どんな星を結び付けてあげたらよいのだろう?あきさんは考えました。
あきさんが話し終えると、未来さんは本当に優しい、美しい笑顔を浮かべて言いました。
「あなたは、神になったのね。」
「えっ?」
「素晴らしい体験をしたのね。それを笑い飛ばすこともできるし、夢と忘れることもできるわ。でも、実体験だと思って大事にすることもできるわね。」
「ああ、そうですね。忘れるなんてとてもできないわ。」
「望むことは、なんでもかなえたでしょう?怖いこと、不安なことは支えたでしょう?だから、あなたは安心して、思うままに生きればいいのよ。」
「そうですね。そういうことだったんですね。生まれがどうであれ、家族がどうであれ、私たちはひとりぼっちじゃないんだわ。みんなと無限につながっているのね。」
「ええ、そうですね。」
「そうして、私が星なら、どんな星であっても、他のどれかの星を輝かせる役に立つんだわ。そして、宇宙には、私を輝かせることができる星も、たくさんある。美しいつながりは無限で、私はその無限につながる星たちの1つでしかないんだわ。私がどのようであっても、星である限り、輝けるんだわ。これってすごい。
出来事も同じなんだわ。ひとつの出来事は、無限のつながりのひとつでしかないんだわ。私がどんなに悲観しようと、楽観しようと、思い通りであろうとなかろうと、それは無限のつながりの一環でしかないのね。
諦めたと思っても、つながっていることもある。つないでおきたいと思っても、切れてしまうこともある。その時々でどうなるかはいろいろだけど、こうでありたいと強く願って、そうなるようにしていれば、思いがけないルートを通って、それが実現するんだわ。
大阪に行きたいからって新幹線しか使えないわけじゃないのと同じね。飛行機でもいいし、歩いていってもいい。ニューヨーク経由だってありなんだわ!」
「ええ、ええ。そうですよ。」
「だったら、私、したいことがあります!」
今日も読んでくださってありがとうございました。
あなたに、あらゆるよきことがなだれのごとく起きますように。






