2b1c7c41.jpg

 「では、あきさん。お母さんのことはどのように見ることができるかしら?」

 


 「父と同じように考えてみたら、母にとっても、父といることはとても都合がよかったんだと思うわ。」

 


 「どんなふうに都合がよかったのかしら?」

 


 「母は、とても若いうちに父と結婚したので、世間をよく知らないし、自分で食べていくとか、一人で生きるとかいうことにものすごく不安を持っていました。それなのに、父の奴隷のように生きていくことには納得できなかったようで、いつも私に愚痴ばかりこぼしていました。

 

 でもね、不安と、納得できないことの二つあったことが、母にはとても都合がよかったんだと思うんです。

 

 父が強迫的に母に家にいるよう迫るから、自立できないんだと思うことで、一人で生きる不安から目を逸らすことができました。子供もたくさんいたから、子供のために離婚できないと思うことで、夫と直接対決して捨てられる不安からも目を逸らせることができていたわ。

 

 そして、私という聞き手に愚痴をこぼすことで、自分はこの不当な扱いを納得しているわけではないけどしかたがないんだと主張して、解決とか行動を起こすとかから逃げている自分を正当化していたんだと思います。母にとって、あの環境は都合の良いことだらけだったんだわ!」

 


 「あなたは、さっき、お母さんをおろかで身勝手な人だと言っていたけど、今もそう思う?」

 


 「そうですね。確かにおろかで身勝手だけど、実は世間知らずの子供で、なのに大変な環境に身をおいて、不安だらけの少女だったんだと気付きました。」

 


 「ああ、あなたはまた、大きく視点を転換したわね。」

 


 「はい、そうみたいです。」

 


 「どのように視点を変えても、あなたがご両親との間にいて、たくさんの心の傷を受けたという事実は変わらないかもしれないわ。それをそんなふうに冷静に振り返ろうとするだけで、とても勇気がいることだったわね。すばらしいわ。」

 


 「ありがとうございます。」

 


 「そうして、あなたは、今、ご両親がなぜあなたを傷つけてしまったのか、その理由にたどりついたわけね。どんな気持ち?」

 


 「う〜ん、もういいかなって。」

 


 「もういい?」

 


 「はい。今も、悲しみは消えないんです。時間がこんなにたっても、どうしてもっと愛情豊かに接してくれなかったのだろうと思ってしまうんです。どうしてもっと温かな家庭を築いてくれなかったんだろうって。もういい年なのに、気が付くと、私はいつも傷ついた子どもに戻ってしまっているんです。」

 


 「そうなのね。とても辛い思いをしたんだもの。自分を責めることはないわ。」

 


 「ええ、そうですね。だから、もういいかなって。傷ついた子供でいるのは、もうやめていいかな。両親が私を傷つけたのは、それぞれがとても幼くて不安に負けてしまったからだったとわかったので、そこは清算して前に進みたいな。」

 


 「ええ、できますよ!進みましょう。素晴らしいわ、あきさん。あなたは、これから生きていきたい方向を見つけたではありませんか?」

 


 「え?」

 


 「傷ついた子供を卒業して、今度は何になりましょうね?」

 


 「あ!ホントだわ!!すごい。」

 


 「さあ、何になりたい?想像の翼を大きく広げて。あなたなら、何にでも、どのようにもなれるわ。必要なものはすべて与えられる。何も心配しないで、なりたいものただそれだけに集中すればよいとしたら?」

 


 「わぁ!どうしましょう!何になろうかしら!!」

 

 今日も読んでくださってありがとうございました。
 あなたに、あらゆるよきことがなだれのごとく起きますように。