「多分、失敗することを恐れているんです。」
「どうなることが失敗なのかしら?」
「たとえば、好きな人の前で『好きです』って言ったとしますよね。『ありがとう、僕も好きだよ』って話になればいいですけれど、『ごめんね、君に恋はできないよ』って言われたら、どんなに傷つくかしら?例えば、『私と腕を組んで歩いてください』って素直にお願いしたとしますよね。『いいよ』って腕を差し出してくれたら、ああ言ってよかったぁって思うけど、『気持ち悪いことを言わないでくれ』なんて返事だったら、私、恥ずかしくて、二度とそういうこと言えなくなっちゃうわ。」
「傷ついたり、恥ずかしい思いをすることが失敗なのね?」
「はい、きっとそうです。自分の思いのままに振る舞って、それを否定されたら、私の人格や存在まで否定されたような気持ちになって、とても辛いと思う。だから、そうならないように、本当は言いたいと思っても、言わないほうがいいと判断している気がします。」
「したいように振る舞って、否定されると、あなたにはとても不都合なのね。だから、その不都合を避けようとしているのね。」
「ええ。ええ、そうですね。意識していたわけではないけど、そうみたい。」
「あなたが本当は思うままに生きたいと思っていることと、あなたの判断とは矛盾しているように聞こえるけど?」
「そうですね。矛盾していますよね。思うままに生きたかったら、相手の反応がどうかは許容しなくちゃいけないわ。相手に私を傷つけない反応しかさせないためには、相手をコントロールするか、私が相手のいいなりになるか、どちらかだわ。」
「今のあなたはどうなのかしら?」
「私、相手のいいなりだわ。そして、嫌われないように嫌われないようにとそればかり気にしていて、自分の要求は、出さないか、こっそりうまく状況を操作して叶うようにしているわ!」
「そういう自分をどう感じる?」
「理想の自分じゃないわ。なんだか、他人の人生を生きているみたいだし、ずるいわ。ぜんぜんイケてない。」
「今あなたが気付いたことを、ハヤトさんとの関係にあてはめて見てみるというのはどうかしら?」
「・・・・・・。」
あきさんは目を閉じて、じっくり考えようとして、ふと、ここに来てからどれくらい時間がたったのだろうかと思いました。
「あの、私、ずいぶんゆっくりしてしまっているけど、お邪魔ではないのですか?」
「まぁ、そんな心配はなさらなくていいのよ。今日は予約がひとつも入っていないから、時間はたっぷりあるわ。」
未来さんは微笑んで、ゆったりとソファーの背に体をうずめました。
あきさんは、予約ってなんだろうと思うものの、それ以上にハヤトさんとの関係について考えていました。
今日も読んでくださってありがとうございました。
あなたに、あらゆるよきことがなだれのごとく起きますように。







