「そうなのね。あなたのからだは、とても重くてだるく感じられるのね。では、あなたのからだがそんなふうに感じる原因は何なのかしら?何か思い当たることがあるかしら?」
あきさんは、その原因を考えてみようとしました。
でも、何かが、それを考えたくないと拒絶します。
未来さんは、静かに、あきさんの答えを待っています。
あきさんは、期待に弱い自分をとてもよく知っていました。相手が期待してくれていると思うと、ついそれに応えようとしてしまうのです。「いや」と言えない自分に唇を噛んだことがどれほどあったか!
「その原因を今は考えたくないような気がするんです。」
ごく自然に、そんな拒絶の言葉を口にしている自分に、あきさんは驚いてしまいました。言ってしまってから、失礼なことを言ったかしら、落胆させるのではないかしら?無礼者だと思われるのでは?怒らせてしまっていないかしら?と、矢継ぎ早に疑問が沸き上がりました。でも、未来さんの反応は、あきさんが恐れたものとはまったく違っていました。
「そうなの。では、この質問はやめにしましょう。あなたが話したいことをお話しましょうね。何がいいかしら?」
あきさんは、未来さんの言葉や様子になんの変化もないのを見て、ほっとすると同時に、いっそう安心して、くつろいでいく自分を感じました。
「少し、休みたい気がします。お話は後でもいいですか?」
あきさんは、素直に思った通りのことを言ってみました。
「もちろんですよ。好きなだけのんびりなさいな。」
あきさんは、目を閉じました。
温かな日差しが肌に当たっています。その部分が吸収した熱が、じんわりと体中に広がっていくような気がします。かすかなアールグレイの香りが漂っていることにも気付きました。しゅんしゅんとお湯が沸く音がしているのは、ストーブの上に載った、大きな鉄製のやかんから吹き出している蒸気の音でしょう。
甘いショートケーキが食べたいな。生クリームいっぱいの、大きなイチゴがのっている、ふわふわのスポンジケーキ・・・
「もしよかったら、ケーキでもいかが?お茶をいれてみたのだけど。」
未来さんの声がして、あきさんは目を開けました。
小さな丸いテーブルの上に、見たこともないような美しいブルーのティーセットが置いてあり、一緒に、おいしそうなショートケーキが並んでいました。
「まぁ!」
あきさんが息をのむと、未来さんはあきさんの気持ちを察したように言いました。
「お好きなような気がしたのだけど、どうかしら?」
「好きもなにも・・・」
あきさんは、その丸いテーブルも、青いティーセットも、ショートケーキも、何もかも、お金さえあれば自分で買っていたと思うほど最高に好みのものばかりでした。どうして未来さんは私の好みをご存じなのかしら?と思うほどでした。
「どうやら趣味が一致したようね。」
未来さんは、カップをゆったりと口元に運びながらほほえみました。
あきさんは、その紅茶が大好きなアールグレイであることも、奇跡のような驚きとともに感激していました。
「ああ、おいしい・・・」
ふと、こんなにのんびりと最高のお茶やケーキをいただいたのは本当に久しぶりだと思いました。それが、こんなに心地のよいものだったのだと気付いた点については、人生初だと思いました。
今日も読んでくださってありがとうございました。
あなたに、あらゆるよきことがなだれのごとく起きますように。






