あきさんは、不思議な気がしました。
そのおばあさんを、あきさんは以前からとてもよく知っているような気がしました。
でも、記憶のどこをたどっても、あきさんにはそんな高齢の知り合いはいません。自分のおじいさんやおばあさんはみな、すでに亡くなっています。誰だったっけ?テレビで見た人かしら??でも、やはり芸能人ではなさそうです。いくら考えてみても、知り合いだとは思えず、初対面だと思われました。
なのに、そのおばあさんがあきさんに話しかける口調や雰囲気もまた、あきさんをずっと以前から知っているかのようでした。
「おばあさん、私、どこかでお会いしましたっけ?」
「あら、わたし、おばあさんではありませんよ。未来といいます。たくさんの人たちが私のことを未来さんと呼ぶわ。だから、あなたもそう呼んでちょうだいね。」
「失礼しました!では、未来さん。私、どこかで・・・」
「まぁまぁ、そのようなお話はあとでしましょう。今、どんな気分?何を感じているかしら?」
未来さんは、穏やかな、包み込むような笑顔で問いかけました。
「今の気分ですか?え〜っと・・・」
あきさんは、考え込みました。
私は何をしていたのだっけ?ここはどこだろう?気分?そんなの、嫌な気分に決まっている・・・
「考えるのではなくて、今感じることを話してくださいね。今、この瞬間、あなたは何を感じているかしら?」
あきさんは、改めて自分の感覚を探ってみました。
すると、初めての場所で、初めて会う人と話しているというのに、自分がまったく緊張していないどころか、心地よささえ感じていることに気付きました。それはとても意外なことでした。
「いま、なんだかくつろいでいます。緊張はしていません。」
「そうなの。では、あなたの体はどうかしら?何を感じている?」
あきさんは、変なことを聞く人だなと思いました。気持ちがくつろいでいて緊張していないなら、体だってその通りに違いありません。なぜそんな当たり前の質問をするのだろう?と思いました。
「体が何を感じているか、改めて探ってみるというのはどうかしら?まずは足首。足首はどんな感じ?」
未来さんがそう言うので、あきさんは自分の足首を意識してみました。足首だけを感じるなんてしてみたことがなかったので、どれが足首の感覚なのかさっぱりわかりません。でもふくらはぎのあたりが、ひどくだるいことに気付きました。
「足首はわからないけど、膝から下がすごくだるいです。重たい感じ。」
「では、腿は?」
腿は、いつの間にこんなに脂肪がついたのか、自分で思っていたよりも太いことに気付いて、あきさんはがっくりしました。
太いだけでなく、ひどく感覚が鈍くて、どんよりとしているような気がしました。」
お尻も、腿と同じように、どんよりと重たく感じました。
「では、腰はどうかしら?」
腰は、ピリピリした痛みを感じていました。砂袋を取り付けて歩いているような重さと痛みでした。
「とてもいい調子よ。次はおなかね。おなかはどう?」
あきさんは、だんだん自分のからだの感覚をつかむことに慣れてきました。おなかは、内側に何かを抱え込んだかのようにパンパンに緊張している気がしました。背中は重みに耐えかねて縮こまっているような感じ、胸は内側にうずくような痛みを抱えていました。
顔や頭の皮が意外なほどにつっぱっていて、首がねんざをしたように痛んでいました。
「いいわ。では、あなたのからだは何を感じていたのかしら?」
あきさんは驚いていました。心と体は別のことを感じていました。自分のからだがこんなにも重く疲れて緊張し、痛んでいることに気付いていなかったのだと、改めて思い知らされました。
「とても疲れているようです。あちこちが重くて、痛くて、だるいわ。それに緊張していて、少しもくつろいでいない。何かに耐えているような感じです。」
今日も読んでくださってありがとうございました。
あなたに、あらゆるよきことがなだれのごとく起きますように。






